──厳しい練習を意識しすぎて、パヴィチェヴィッチHCが夢にまで出てくる選手もいるそうです。

(笑いながら)可哀想に。私も、寝起きぐらいはそっとしておいてやりたいのですが。

──一方で、昨季の優勝が選手の自信となり、厳しい練習を耐え抜くモチベーションにつながっていることも事実だと思います。

 選手たちがそう思ってくれていると良いのですが。私は、ただただ過酷な練習を強いているわけではありません。目指しているのは国際レベルのバスケットであり、全てはそこに到達するためのものです。シュート、パス、体の強度、連係プレー、試合中の判断力……。改善を要求する項目が多くなることが厳しさというのなら、確かに私は「厳しい」。

 もちろん、HCの仕事は「ただ要求すること」ではありません。選手との信頼関係、絆を築くことが大切です。本や映画から借りてきた言葉だけで説明しても伝わりませんよね。チームを成功へ導くためにこそ、厳しい要求の数々がある。それを証明するのが、私の仕事だと思っています。

──田中大貴、竹内譲次、馬場雄大ら日本代表選手3人が残留し、チームは今季もタレントぞろいです。

 一人ひとりが試合のときに何をするのか、キャリアや年齢に伴うものを含め、期待する部分を一対一で話すようにしています。代表選手はチーム練習になかなか参加できず難しい部分もありますが、彼らは私のやりたいこと、チームが求めていること、自分がやらなければならないことを明確に理解していると思います。

──22歳の馬場選手は若手の筆頭です。昨季リーグ新人賞を受賞するなど既に実績を残していますが、今季はどんなプレーを期待しますか。

 雄大は才能にあふれた日本を代表する選手です。若くて勢いがあり、精神力、勝利への強い執着心がある。努力家でもあります。ただ、彼はもっと高いレベルに行ける選手です。まだまだ伸びしろがある。身体も技術も精神力も、ダイヤモンドの原石のように磨いていくことで、その輝きを発揮していきます。私には、彼の能力を伸ばす責任があると感じています。

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