「流動性リスクの高い商品すなわち『売りたい時に売れない』商品に深入りしすぎたせいで起きたのがリーマン・ショックだ。悪魔のような金融マンが無知に付け込んで売りまくったせいではなく、多くの金融機関が『流動性リスク』を軽視しすぎた結果とも言える。マーケットに十分厚みがなかったのに『あるがごとく』ビジネスを活性化してしまったのが問題だった」

 流動性リスクは金融機関だけの問題でなく、個人でも注意が必要だ。昨今も、アルゼンチンやトルコの債券や債券投信に手を出し、痛い思いをした方がいるのではないか? 通貨下落と金利急騰に恐れおののき、売却しようにもなかなか売れない。やっとついた価格は途方もなく低い。

 流動性リスクは、私の実務経験でも最も取りたくないリスクで、「取るな」といつも申し上げている。財政赤字が悪化し、日銀の資産が膨らんで“メタボ”になった以上、私は「保険の意味で外貨を持ちましょう」と言っている。しかしあくまでも保険。儲けるためでない。高金利だからと言って新興国通貨建て投資は考え物だと強調したい。

週刊朝日  2018年10月5日号

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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