ジャーナリストの田原総一朗氏は、新聞が一面トップで報じた防衛省にかかわる話題を取り上げ、日本の未来に問題提起をする。
* * *
9月17日の朝日新聞が、1面トップで次のような報道をした。<防衛省が海上自衛隊の潜水艦を南シナ海へ極秘派遣し、東南アジア周辺を長期航海中の護衛艦の部隊と合流させて、13日に対潜水艦戦を想定した訓練を実施したことが分かった>
今回の訓練は、公海の「航行の自由」を強くアピールし、中国を牽制する狙いがあるということだ。
中国が南シナ海の複数の岩礁を埋め立てて、軍事拠点化していることに、米国が強く反発しているのは事実である。海上自衛隊は、公海の航行の自由を強く訴えている。もしも南シナ海に進出した中国が、日本の船舶の航行を妨害しているのならば、こうした訴えは納得できるが、日本の船舶は自由に航行できている。それなのに、なぜわざわざ中国を刺激しなければならないのか。一体、防衛省は、どのように対応しようとしているのか。さらに、9月18日、朝日新聞はやはり1面トップで、政府が、陸上自衛隊員2人を、エジプト東部のシナイ半島で、イスラエル、エジプト両軍の活動を監視している多国籍監視軍(MFO)に派遣することを検討している、と報じた。これは、どういう狙いがあるのか。
これまで、日本政府は中東については慎重に慎重に考えてきた。だから、日本では、ISによるテロ行為がなかったのだが、なぜ、いま自衛隊員の派遣を考えだしたのか。
それに任務の内容はPKOに類する国際的な活動だということだが、実は1999年以降、PKOは交戦権を有しているのである。だから、南スーダンのPKOで稲田防衛大臣(当時)が虚偽の説明をせざるを得なかったのだ。陸上自衛隊は、そのごまかしを繰り返そうとしているのか。繰り返すが、自衛隊員派遣に、どういう狙いがあるのか。
この2点を、防衛大臣経験者2人に問うた。海自は海自が考え、陸自は陸自が考えているというのであった。そして軍隊というのは、それぞれ強くなること、行動範囲を広げることを求めているのだという。