そんな空気を背景に、報道陣が協会の“忖度”を感じた場面があった。稀勢の里が勝ち越しを決めた10日目の相手が「遠藤」と発表されたときだ。

「番付から言えば妥当なんですが、遠藤は口にしないけど、故障しているのでは、と懸念されていました。そんな遠藤と当てるのは、とにかく勝ち越させたいってことでは、と(苦笑)」(担当記者)

 勝ち越したが、角界では「辞めるのは時間の問題」とも言われている。

「左のおっつけを最大の武器として横綱にまでなったのに、故障で使えなくなっているんですから。ヨレヨレですが、それでも勝ち越したのはすごいことなんですよ」(前出A)

「馬力がない、スタミナがない、腰が高い、と弱点だらけ。引退と背中合わせですよ」

 こう語るベテラン記者Bは、2002年の貴乃花の話を出す。前年5月場所の武双山戦で右ひざを大けがしたが、それでも強行出場。優勝決定戦で武蔵丸を下して優勝するも、無理がたたって02年7月場所まで休場。8場所ぶりに出場すると12勝を挙げて奇跡の復活と言われたが、ひざの悪化で翌場所を全休。進退をかけた03年1月場所8日目に4勝3敗1休となり、翌朝引退を決意した。

「稀勢の里は九州場所の休場もある。で、新年の初場所で、また、進退をかけて、ってことになるかもしれない。で……」(同前)

(岸本貞司)

週刊朝日  2018年10月5日号