勝ち越して喜ばれる横綱の心境やいかに… (c)朝日新聞社
勝ち越して喜ばれる横綱の心境やいかに… (c)朝日新聞社

 大相撲9月場所は、進退を賭けて8場所ぶりに出場した横綱稀勢の里が10勝5敗の成績を収め、三賞受賞者ゼロのなか、「敢闘賞をあげたい」との皮肉の声も聞こえてくる。

「『辞めろ』という声は、これで、もう出ませんよ」

 9月場所10日目、進退をかける稀勢の里が遠藤を破って勝ち越しを決めたとき、ベテランの相撲記者たちは口をそろえてこう言っていたものだ。結果としては10勝を挙げ、 横綱審議委員会、横審が求めていた“二桁”という条件を何とかクリアした稀勢の里。

「たぶん横審も、二桁勝てなくても、引退しなさい、とは言わなかったはず。相撲協会側なんか、8場所も休んでいたんだし、8番勝てばいいんじゃないの、という空気でしたから。たとえ本人が『辞める』と言ったって周りが止めたはずです」(ベテラン記者A)

 それもこれも稀勢の里の圧倒的な人気が実感され、協会も大喜びだ。今場所は文字通り“地鳴りのような大歓声”が起きていた。

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そんな空気を背景に、協会の“忖度”を感じた場面が…