会社としては特別な手当ては支給せず、それぞれが有給休暇などを使って、あくまで自主的に参加するものだという。

 ちなみに、ボランティアの募集枠は組織委員会が約8万人、東京都が約3万人の計約11万人。現時点で全員確保できるかわからない状態だ。約2千人も手を上げていたのなら、選考せず全員参加させればよさそうにも思える。この疑問に富士通の広報は、「選考のプロセスに関わっていないのでわからない」としている。

 ボランティアの募集を巡っては賛否両論があり、議論は過熱している。

 国際オリンピック委員会(IOC)のコーツ副会長は9月12日、「ボランティアはボランティア。やりたくなければ参加しなければいい」と発言した。

 お笑いタレントの加藤浩次も、9月14日の『スッキリ』(日本テレビ系)でこう持論を展開した。

「ボランティアなんだもん。やりたい人が一生懸命やって。それ以外の外野がウダウダ言ってんじゃねえよ」

 これには「正論だ」などと賛成する声もある。一方で、五輪を行政が主導し大金がつぎ込まれていることを理由に、否定的な意見も目立つ。

 例えば、ボランティアを募集するためだけにも多額の税金が使われている。東京都は「ボランティアの機運醸成や育成支援」のために、2018年度だけで約10億円の予算を計上している。女優の広瀬すずを起用したCM動画の製作費には約4千万が投入された。CM動画は民放でも流れているが、費用はいくらかかるのか、都の担当者は明言しない。

「一般の反応を見ながら放映期間を決める。予定している予算配分はあるが、確定した金額は言えない。放映が終わった後にきちんと金額を確定していく」

 組織委員会の役員報酬が最大数千万円に上ることにも、疑問の声がある。一部の企業や役員は金銭的なメリットを受けているのに、ボランティアに「自腹を切れと」いうのは納得しにくいというわけだ。

 大会組織委員会が募集する約8万人については、交通費などの名目でプリペイドカードなどが配られる予定だ。約3万人を募集する東京都も同様の対応をするかどうか、「検討している」という。

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単純計算では合計11億円…