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寄与分算出の仕方(週刊朝日2018年9月28日号から)
寄与分算出の仕方(週刊朝日2018年9月28日号から)

 親の介護は、長男・長女や同居の子どもなど特定の人に負担が集中することが多い。親もつい、末っ子を甘やかしがち。介護をめぐるきょうだい格差を侮ってはいけない。その不満は、遺産相続のきょうだい戦争に発展しかねないからだ。

【図で見る】寄与分算出の仕方

 こうしたことを防ぐには、どうしたら良いのだろうか。まずは、格差の解消を目指す方法を考えてみよう。

 きょうだい間で特定の誰かに負担が集中しがちなのは、親の子どもへの頼り方にも原因がある。親が「いずれ頼ろう」と思うのが第1子である傾向は強い。特に母親は、夫が先立ち残された場合、長男を夫の代わりとみなしてしまう。また、同居や近居の子ども、自分と相性が良い子どもを頼りがちだ。

 親は精神的に特定の子どもを頼ってもかまわない。ただ、実質的な負担が誰かに集中するのは避けたほうが良い。そのためには、親は子ども全員に伝わる頼み方をすることだ。

「誰か一人に伝えるとしても“きょうだいで分担してほしい”とお願いするのが、親の務めです」

『親の介護は9割逃げよ』の著書でも知られる、ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんは、こう指摘する。

 夫が先立ち、妻が残された場合、年金だけでは心もとないため、子どもが親へ仕送りする例は少なくない。親が子どもに経済的な援助を求めるときも「みんなで分担してほしい」という。伝えるのは特定の一人であっても、基本的には分担する頼み方をすることが大事だ。

「きょうだいの良いところは、負担を分けられるところでもあります。だから親としては、いくら特定の誰かが頼りやすくても、全員で分担できるような伝え方をすべき」(黒田さん)

 やってはいけないのは、親が特定の子どもを“甘やかす”こと。例えば、末っ子だけにいつまでもお小遣いを渡すなども火種を生みやすい。老後のマネープランに詳しいファイナンシャルプランナーの深田晶恵さんは指摘する。

「親は、離れて住む子どもはたまにしか会わないからこそ、良い顔を見せようとしがち。ですがあまりに特定の子どもを甘やかしていると、他のきょうだいは良い気持ちがしないものです」

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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