「ブラッシングはできているはずなのに、歯ぐきの状態が急に悪くなっています。寝ているときに口呼吸になって口が乾燥しているのが、良くないのかもしれません。提携している病院の紹介状を書くので、SASの検査を受けてみませんか」

 歯科医の勧めもあって検査したところ、SASであることがわかった。その治療を始めたことで、口の状態も改善したという。

 まれではあるが、がんなどの病気によって臭うこともある。

 新谷院長はお酒が好きで居酒屋によく行く。そこではたくさんの中年男性と出会うが、「危ない」と感じる臭いがあるという。

「がん探知犬ではないですが、長年歯科医をしていると、がんの臭いがわかってきます。なんとも伝えにくい臭いですが」

 ほかにも消化器系の病気や糖尿病、腎臓病や肝臓病でも口臭がすることもある。例えば、糖尿病では甘酸っぱい傷んだ果物のようなアセトン臭、腎臓病ではアンモニア臭などを感じるときがある。急に臭いが強くなったり、いつもと違う臭いがしたりする場合は、かかりつけの歯科医や内科医らに話してみる。

 強い臭いがあると思い込むのも不健康なので、自分自身で心配しすぎることはない。気づいた家族らが、「ちょっと体調が悪いのかもしれないね。お医者さんに相談してみたら」などと、本人の気持ちに配慮しながらうまくアドバイスしてあげよう。

 いまは「口臭外来」がある病院も増えていて、検査装置も進化。臭いのレベルが数値で示されるので、客観的に判断できる。

 口臭は、ありふれたことでも、確かに「死の予兆」になり得る。普段から家族やパートナーの体調に気を配って、サインを見逃さないようにしたい。(本誌・岩下明日香)

週刊朝日  2018年9月28日号より抜粋