大坂の活躍を見続けた内田さんは、4年前に本人から聞いた話が忘れられないという。当時はまだ無名の新人選手。しかし、全米オープンの優勝経験もあるサマンサ・ストーサーを大坂が破った一戦があった。

「彼女に勝利の心境を聞いたら、『ここで何か一発、ものすごいことをかましてやろうと思った。私にはサーブとフォアハンドがある。入るかどうかわからないが、とにかく思い切り打って、まずストーサーや観客を驚かせてやろう』と答えていました。こちらが驚かされました。目玉選手のストーサーの試合のため、センターコートで行われ、観客も多くいました。そんな状況も考えてのことだったと考えられます」

 大坂は13日に帰国し、記者会見に臨んだ。主要テレビ局で生中継され、“大坂旋風”が巻き起こった。

 会見で「おもしろいおじいさん」と評した祖父が住む北海道根室市は、優勝を記念した垂れ幕を出した。大坂が3歳まで住んだ大阪府は「感動大阪大賞」の授与を考えているという。

「過去には五輪メダリスト、大相撲の豪栄道関、選抜高校野球で活躍した大阪桐蔭高校や履正社高校と地元に縁のある選手や団体に贈っています。知事の予定の調整等で数カ月先になると思いますが、感動が冷めないうちに早く贈りたいですね」(府の担当者)

 2016年からスポンサーの日清食品ホールディングスは、記念商品の発売を検討。担当者は「同じくスポンサーをしている錦織圭選手が4年前に全米オープンで準優勝した際は、錦織選手のデザインの包装の記念カップヌードルを数量限定で出しました。今回の記念商品は未定ですが、前向きに準備しています」という。

 東レ・パンパシフィック・オープンは、東京都立川市のアリーナ立川立飛で開かれる。例年は江東区の有明コロシアムでの開催だが、五輪に向けた改修工事で使えないためだ。立川市の商店街関係者はこう話す。

「当初は有名選手の出場が決まっておらず、チケットの売れ行きが心配でした。地元としてどう盛り上げようかと思っていましたが、ホッとしたのが本音です」

 大坂の優勝後から数日で、チケットはほぼ完売。ただ、悩みも打ち明ける。

「有明は約1万人の観客が入りますが、立川は約3千人。大坂選手見たさに、チケットを買いたい人は多いはずですが……」

 シードの大坂は2回戦からの出場で、試合は19日以降。アウェーの雰囲気の米国で見せた以上の感動を、ホームの日本でもきっと見せてくれるはずだ。(本誌・大塚淳史)

週刊朝日  2018年9月28日号