【文豪の湯宿】夕食後には隠し芸大会も…作家・丹羽文雄が愛した四万の湯 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

【文豪の湯宿】夕食後には隠し芸大会も…作家・丹羽文雄が愛した四万の湯

このエントリーをはてなブックマークに追加
鈴木裕也週刊朝日
1694年開業の老舗ならではの風情が残る。積善館(せきぜんかん)/群馬県中之条町四万4236

1694年開業の老舗ならではの風情が残る。積善館(せきぜんかん)/群馬県中之条町四万4236

「浪漫の山荘」とも呼ばれ、多くの著名人が愛した五つ星客室。同人集団「十五日会」のメンバーも宿泊した

「浪漫の山荘」とも呼ばれ、多くの著名人が愛した五つ星客室。同人集団「十五日会」のメンバーも宿泊した

 文豪たちの作品に登場する温泉宿を訪ねる連載「文豪の湯宿」。今回は「丹羽文雄」の「積善館」(群馬県・四万温泉)だ。

【「浪漫の山荘」とも呼ばれ、多くの著名人が愛した五つ星客室】

*  *  *
 昭和27年11月、丹羽文雄は群馬各地を歴訪している。主宰する同人誌の合評会「十五日会」の作家仲間十数人を伴う団体旅行だった。

 旅行初日は前橋市の群馬会館での「現代小説について」と題した講演、翌日は中之条高校で講演。その後、県の観光課長の案内で、紅葉たけなわの四万温泉に向かう。

〈中之条を通って四万街道を自動車で走り、(略)四万川の渓流に沿って進むと赤、黄に色づいた山々の紅葉がまばゆく面前に迫ってきた。これは美しい──わたしは思わず体を車中にもたげた〉(「四万の印象」)

 大人数の一行を受け入れたのは元禄時代創業の老舗「積善館」。主人が丹羽と早大同窓という縁だった。夕食後には隠し芸大会も行われる大宴会となる。「雀のお宿のおどり」「四万音頭」「石川五右衛門釜ゆで」などが披露され、丹羽は終始、笑いながら見入っていたという。

 一行は翌朝、日向見温泉で名物の蕎麦を食べた後、帰京する。だが、丹羽はそのまま群馬にとどまり、短編80枚を2晩で書き上げ、周囲を驚かせた。『親鸞』『蓮如』などの丹羽文学が花開く前の47歳のことだった。(文/本誌・鈴木裕也)

「積善館」(せきぜんかん)
群馬県中之条町四万4236

週刊朝日  2018年9月21日号


トップにもどる 週刊朝日記事一覧

続きを読む

おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事

あわせて読みたい あわせて読みたい