音楽の仕事では若いころから思い続けて、まだできていないことがありますね。それは、いつまでも愛される歌を作詞すること。いい歌、世代を超えて残る歌って、最初の2行で世界観ができあがってるんですよ。

 例えば、坂本九さんの「上を向いて歩こう」は「上を向いて歩こう 涙がこぼれないように」。アダモの「雪が降る」は「雪は降る あなたは来ない」。トワ・エ・モワがヒットさせた「誰もいない海」は「今はもう秋 誰もいない海」……というように、歌い出しの2行で完結していますよね。

 最初の2行だけで一枚の絵ができあがっている感じ。そんな曲、私はまだ作れてないんです。ありがたいことに、今も作詞のご要望をいただけているので、私がいなくなっても、人々が口ずさめるような歌を作る、というのが夢です。

(聞き手/浅野裕見子)

週刊朝日  2018年9月21日号