ただし、経験が豊富な施設でも10センチを超えるような大きな腫瘍や過去にも腹部の手術を受けていて癒着がある場合などは、開腹手術を選択することもある。

 現在は高難度の肝切除術を腹腔鏡で実施する場合、厚生労働省が定める「術前前向き症例登録制度」により、手術前に症例を公的データベースに登録し、日本肝胆膵外科学会など関連団体と連携して治療方針の決定や術後の管理などをおこなうことが保険診療として実施する条件となっている。

 腹腔鏡手術の技術があるかどうかの一つの目安となるのが、日本内視鏡外科学会が定める技術認定だ。取得者は学会のホームページで公開されている。ただし、腹腔鏡手術の技術が高いからといって、肝切除術の技術も高いとは限らない。肝切除術の技術は、日本肝胆膵外科学会が認定する高度技能専門医であるかどうかが、目安になる。

 肝機能がある程度保たれていて、がんの大きさが3センチ、個数が3個以内なら手術のほかラジオ波焼灼術も選択できる。ラジオ波焼灼術は、腫瘍の中に電極針を刺し、電流を流してがんを焼く。再発した場合に治療をくり返しやすいほか、全身麻酔ができなくても治療できるメリットがある。

「手術よりもラジオ波のほうがからだへの負担が軽いと言われていますが、がんのある場所などによっては一概に言い切れないこともあります。がんの手術で重視しなければならないのは、安全性と根治性。そのためには手術かラジオ波か、開腹か腹腔鏡か、個々の症例に合わせて検討していくことが大切です」(同)

◯国立がん研究センター東病院肝胆膵外科長
後藤田直人医師

(文/中寺暁子)

※週刊朝日9月21日号