上司からは、「エンターなんだから、それくらい我慢しなきゃ」「君は心が弱い」と言われた。

 別の上司に相談しても、「Bさんのわがままには対応できない」「解雇対象」などと言われた。

 その後も職場でのパワハラは続き、先輩からこんなことを言われたという。「お前みたいにやる気の無いやつは、全力でつぶすから」

「ショーベース(舞台)には神様がいるんだから、お前は神様に嫌われているから3カ月後に絶対けがするから覚えておけ」
 さらには上司や同僚らとの打ち上げの飲み会で、職場環境音ことを相談すると上司はこんな暴言をしたという。

病気なのか。それなら死んじまえ」
「30歳以上のババアはいらねーんだよ。辞めちまえ」
「てめーのワガママは聞いてらんねーんだよ」

 上司だけでなく同僚からも無視や暴言などのいじめも受けるようになり、その結果、心療内科に通院することを余儀なくされた。

 2人の主張に会社側はどう反論するのか。

 原告側が提訴を予告したところ、「安全配慮義務違反や職場環境整備義務違反などによる損害の発生はない」などと争う姿勢を示したという。

 オリエンタルランド広報部に取材してみたが、「訴状が届いていないのでコメントは控える」と答えるのみで、説明を避けた。

 TDRを巡っては、こうした事例は「氷山の一角」だという。

 原告2人を支援している「なのはなユニオン」(千葉県船橋市)は、これまでも従業員の不合理な雇い止めといった問題があったと指摘する。

 15年には、東京ディズニーシーの人工河川で、清掃作業をしていた男性が死亡する事故もあった。厳しい労働環境や人間関係などに悩みを抱えつつ、時給1千円程度で働いている人は多いようだ。

 前出の中島さんは「夢の国」のイメージを損ねたくない思いから、辞めていく人も少なくないという。

「着ぐるみに入って踊る出演者は、年に1人1度だけ受けられるオーディションによって選ばれます。ダンスレッスンを続けて腕を磨き、何度も挑戦してやっと受かる人もいる。ようやく夢をかなえたと思って、つらい状況になっても我慢しがちです」(中島さん)

 中島さんは関係者を通じて、原告の思いを聞いている。

「2人とも会社側を訴えて攻撃したいのではありません。今後も仕事を続ける意思があり、夢の国のイメージを壊したくはないんです」

 なのはなユニオンによると、今後、裁判に合わせて記者会見を開くという。「夢の国」の悲しい現実を、2人はどう語るのだろうか。(本誌・岩下明日香)

週刊朝日 2018年9月21日号より加筆