【文豪の湯宿】写生をしながら…作家・高見順を癒した箱根の宿 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)
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【文豪の湯宿】写生をしながら…作家・高見順を癒した箱根の宿

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鈴木裕也週刊朝日

仙郷楼。神奈川県箱根町仙石原1284

仙郷楼。神奈川県箱根町仙石原1284

 文豪たちの作品に登場する温泉宿を訪ねる連載「文豪の湯宿」。今回は「高見順」の「仙郷楼」(神奈川県・箱根仙石原温泉)だ。

【写真特集】作家・高見順を癒した箱根の宿

*  *  *
 昭和23年6月から約半年、結核で鎌倉のサナトリウムに入院した高見順は、翌年7月24日から箱根・仙郷楼でひと夏の療養生活を送る。入院中の心の糧は詩作だったが、箱根では写生だった。きっかけは友人の詩人・池田克己の見舞品だ。

〈七月二十六日 霧。仕事すこし。午後、池田君来る。(略)見舞品として水彩の用具一式をくれる。画を描いて、病いを養えという〉

 そう記された『高見順日記』には、この日以降、達者なタッチで描かれた植物の水彩画が何点も並ぶようになる。絵の素材は宿の庭園や周辺の草木。創業1870年の老舗が有する約1万5千坪の広大な庭園や、近隣の「箱根仙石原湿原植物群落」がお気に入りの散歩コースとなった。昭和31年に発表した短編「湿原植物群落」の執筆にはこの体験が生かされている。

 以後、毎夏のように仙郷楼を訪れる中で、同じ結核療養経験者の人気漫画家・秋好馨と出会い、親交を深めた。宿には、秋好の漫画「轟先生」の絵に高見がサインを添えた色紙が数枚残されている。絵と友情は療養生活の潤いになったにちがいない。(文/本誌・鈴木裕也)

「仙郷楼」(せんきょうろう)
神奈川県箱根町仙石原1284

週刊朝日  2018年9月14日号


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