大センセイ、ちっともちゃんとしていない。なのに、一応社会的には(変わった人だとは言われるものの)、「ちゃんとした大人」として通用している。
謎は深まるばかりだが、困った時には三省堂のシンカイさんに聞くのが一番。毎度のことながら、目からウロコが落ちるような、鮮やかな語釈である。
【ちゃんと】
(2)(世間的にも)しっかりしていて後ろ指を指されることが無いことを表す。
(新明解国語辞典・第四版)
わが意を得たり。まさに大センセイ、昭和君が将来、世間様から後ろ指を指されるような人間にならないために、「ちゃんと」を連発していたのだ。裏返して言えば、世間様さえ見ていなければ、どんなことをしていたって後ろ指を指されることはない。たとえ、妻太郎がディズニーランドで買ってきたミッキーマウス柄のパンツ一丁という姿で、この原稿を書いていたとしても!
だが……。
昭和君には、一風変わった趣味があるのだ。長靴が大好きで、晴天でも長靴を履きたがるのである。
大センセイ、ちゃんとしろコールの一方で、彼には個性や独創性を大切に生きてほしいと願っているのだが、こんな些細なことでさえ、「世間様と違っていい」と言ってやることには、一抹の迷いがある。
ちゃんとしてるのって、実は、楽な生き方なのかもしれないな。
※週刊朝日 2018年9月14日号