前にもコラムで指摘したが、メジャーの舞台で二刀流として投打にハイレベルな形で表現できるのは、現状で大谷しかいない。その二刀流実現には、コンディションに不安があったら絶対にいけない。もし、メジャーに復帰登板して、少しでも不安があるようなら、今年は無理をしないでほしい。将来がある選手なのだから。

 医療スタッフの科学的な診断に関して文句を言うつもりはさらさらないが、カブスのダルビッシュもいろいろと診断が変わって、結局リハビリの過程で、肩、ひじへの違和感は消えなかったようだ。科学的なデータは信用に値するし、原因究明に直結する。しかし、投手それぞれの微妙な感覚は、本人にしかわからない。その感覚を無視してしまったらいけないと感じる。

 中日の松坂大輔がソフトバンク時代にまったく投げられなかったのが、今年は中日で投げられるようになった。30~40もの病院、治療院を経てようやく投げられる状態になった。それだけ投手は繊細な感覚を持つし、複雑に体を使っている。

 大谷がしっかり自己制御しながら投げてくれることを願うばかりだ。

週刊朝日  2018年9月14日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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