春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。JFN系FM全国ネット「サンデーフリッカーズ」毎週日曜朝6時~生放送。メインパーソナリティーで出演中です。「週刊朝日」の連載をまとめた、初エッセイ集『いちのすけのまくら』(朝日新聞出版刊行、1500円+税)が、絶賛発売中です!
春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。JFN系FM全国ネット「サンデーフリッカーズ」毎週日曜朝6時~生放送。メインパーソナリティーで出演中です。「週刊朝日」の連載をまとめた、初エッセイ集『いちのすけのまくら』(朝日新聞出版刊行、1500円+税)が、絶賛発売中です!
一之輔氏の帰省の思い出は…(※写真はイメージ)
一之輔氏の帰省の思い出は…(※写真はイメージ)

 落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は、「帰省」。

*  *  *

 我が家の帰省は地味だ。所帯をもって十数年、都内に住んでいるが、私の実家は千葉。家内の実家は群馬。ともに電車で片道1時間~2時間弱。車もないので、在来線を乗り継いでぼんやりしていると着いてしまう。

「乗車率200%」とか、「この先渋滞20キロ」とか、『THE・帰省』なかんじが羨ましい。西陽に照らされながら、苦い顔して食べるサービスエリアのソフトクリーム、憧れる。

 私は寄席のお盆興行があるので、先に家族を私の実家に帰す。姑との仲も悪くないのか家内も別に問題ないらしい。私も寄席の出番が済んだら実家にむかう。浅草から野田へ。つくばエクスプレスと東武アーバンパークライン(東武野田線)を乗り継ぐ。田舎線路を場違いな横文字が駆け抜けて、午後9時過ぎに帰省。

 私には姉が3人。それぞれ夫と、子供が2~3人ずつ。甥姪もほぼ成人。リビング10畳+ダイニング6畳に最大で18人の大人。そこへ我が家の子供3人が加わる。たぶん町中で一番うるさい場所が我が実家だ。「あー、来た来たっ!」。酔っ払っている姉や姪たち。やれこないだ出ていたテレビがどうとか、ラジオがなんだとか、コラムがワンパターンだとか、「5ちゃんねるのスレッドが過疎ってるのは人気が下降気味な表れだ」とか、大きなお世話だ。義兄や甥はおしなべておとなしいのはなぜだろう。

 遅れ馳せながらビールで乾杯。わずかに残った刺し身を拾うように食べる。大皿の宅配握り寿司はもうイカと巻物くらいしか残ってないが、シャリが大きくて腹にたまる。地元の名物ホワイト餃子が嬉しいが、翌日の口臭が心配。唐揚げに天ぷらに煮物。ほうれん草のおひたし、白菜のお新香にサラダ、サラダにはロースハムとバナナがのっている。昔からバナナだけは解せない。その上のゴマドレはなんなんだ。天ぷらは冷めたやつを、翌日甘辛く煮たのが好きだ。天ぷらは少し残して明日の朝だ。締めで蕎麦が出た。玉ねぎと豚肉を炒めた具に醤油味の熱いつけ汁。1把は食べたか。

著者プロフィールを見る
春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

春風亭一之輔の記事一覧はこちら
次のページ