経営ノウハウがない歯科医の末路 開業して念願だった「城主」が転落するワケ (3/3) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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経営ノウハウがない歯科医の末路 開業して念願だった「城主」が転落するワケ

連載「歯科医が全部答えます! 聞くに聞けない “歯医者のギモン”」

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若林健史週刊朝日#ヘルス

 狭い口の中に器具を入れ、歯や歯ぐきを的確に治療、処置するためにはこまやかな作業が必要で、視野を確保するためには舌をよけたり、バキュームという器具で唾液を吸い取ったり、むし歯で歯を削るときに水を吸い取ったりする作業が必要です。

 通常はこの作業を歯科衛生士や歯科助手がおこない、歯科医師は治療に専念します。歯科医師が1人でやろうとすることは不可能ではありませんが、手は2本しかないので、治療のクオリティーを保つのは難しく、時間もかかってしまいます。「時間をかけてていねいにやってくれる」と患者さんは思うかもしれませんが、1人だからこそ時間がかかってしまうのです。

 つまり、腕とともにある程度の経営手腕は必要だということです。信念を持ち、1人で一生懸命やってクオリティーの高い治療をしておられる歯科医師も知っていますが、患者さんのためには歯科助手がいたほうがいいのかなと思います。

 もちろん、経営第一主義ではいけません。利益を第一に考えてしまうとコストのかからない質の悪い歯科材料を使ったり、時間効率を考えるあまりに、処置を流れ作業で進めていく、という事態にもなりかねません。

 ただし、どのような歯科医院が経営第一主義なのかは、見た目ではわかりづらいのです。

 例えば自費診療の歯科医院、具体的にはインプラントや審美歯科は一等地の新しいビルの中にあることが多く、いかにももうかっている印象を受けるかもしれませんが、治療にコストがかかるので出ていく経費も多いのです。さらにていねいなカウンセリングをおこなえばおこなうほど、利益が少なくなるので、むしろ、経営に苦労しているところは多いです。

 高級レストランは高いけれどさまざまな経費がかかる。それよりも安くて1日1000杯出るラーメン屋のほうが、ある意味もうかる。これは歯科医院にもあてはまるかもしれません。

 良心のある歯科医師は、いい料理を提供したいという思いとコストの問題で、日々、悩んでいるのです。

◯若林健史(わかばやし・けんじ)
歯科医師。若林歯科医院院長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事、日本臨床歯周病学会副理事長を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演


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若林健史

若林健史(わかばやし・けんじ) 歯科医師。医療法人社団真健会(若林歯科医院、オーラルケアクリニック青山)理事長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演。AERAdot.の連載をまとめた著書『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか?聞くに聞けない歯医者のギモン40』が好評発売中。

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