脂肪肝には大量の飲酒が原因となるアルコール性脂肪肝と、明らかな飲酒歴がないのに発症する非アルコール性脂肪肝がある(※写真はイメージ)
脂肪肝には大量の飲酒が原因となるアルコール性脂肪肝と、明らかな飲酒歴がないのに発症する非アルコール性脂肪肝がある(※写真はイメージ)

 日本人のがんで5番目に死亡数が多い肝がん。ほとんどの原因がC型肝炎やB型肝炎ウイルスの感染によるものだった。しかしC型肝炎治療が飛躍的に進歩したことで、その背景は大きく変わりつつある。

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 がんの原因の一つが、ウイルスや細菌の感染だ。代表的なものがヒトパピローマウイルス(HPV)による子宮頸がん、ヘリコバクターピロリ菌による胃がん、そしてC型肝炎、B型肝炎ウイルスによる肝がんだ。

 肝臓は肝細胞が集まってできているが、肝炎ウイルスに感染すると肝細胞が炎症を起こし、それが慢性的に続くと線維化して、肝臓が硬くなり萎縮していく。その結果、肝細胞の数が減り、肝臓の機能も低下していく。これが肝硬変だ。肝硬変になると、肝がんになる危険性が高まる。

 肝がんになった人のうち、90%以上がC型肝炎(約75%)、B型肝炎(約15%)によるものだったが、最近は70%程度となり、その割合は減少傾向にある。大きな理由が、C型肝炎治療の飛躍的な進歩だ。

 C型肝炎ウイルスに感染していることがわかったら、肝硬変や肝がんを予防するために、ウイルスを体内から除去する治療をする。従来実施されてきたのが、インターフェロンという注射薬によるものだったが、副作用が出やすく、治療期間が半年~1年で長いという欠点があった。このため肝がんのリスクが高い高齢者や肝硬変まで進んだ人には使用できなかった。また、たとえ治療ができてもウイルスを除去する効果が出ない人の割合も高かった。

 しかし2014年に飲み薬が登場して以降次々と新薬が開発され、現在はほとんどの人のウイルスが除去できる。副作用もほぼない。

 また、C型肝炎ウイルスの感染は、輸血によるものが主だったが、現在は厳重に管理されていて、新たな感染は極めて少ない。

 B型肝炎の場合はウイルスを完全に消失させるのは難しいが、飲み薬を長期間服用することで、肝炎を抑えることができるようになってきている。

 C型肝炎・B型肝炎に感染しているかどうかを調べる血液検査はほとんどの自治体や保健所で、無料で受けられる。40歳以上の人は、一度は受けておきたい。

■自覚がないまま脂肪肝からがんに

 ウイルス性肝炎が原因となる肝がんの割合が減っている一方で、増えているのが肝臓に脂肪がたまる脂肪性肝疾患(以下、脂肪肝)が原因となる肝がんだ。武蔵野赤十字病院院長の泉並木医師はこう話す。

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定期検診で肝がんの早期発見に