「フェイクニュースという表現は事実ではなく有害だが、それ以上に危険なのはジャーナリストに『国民の敵』というレッテルを貼ることだと伝えた。こうした扇動はジャーナリストへの暴力を誘発し、民主主義を損なう恐れがあると警告した」

 これに対し、トランプ大統領はツイッターで「政府内の議論を明かすのはジャーナリストのみならず、多くの人を危険にさらす。非愛国的だ!(中略)新聞業界のトランプ嫌いが、我々の偉大な国を売り渡すのを許しはしない」と反論している。

 他方で、議会からトランプ大統領に対する異論も出ている。米上院は社説が一斉掲載された日に、「報道機関は国民の敵ではない」と宣言する決議文を全会一致で採択。決議文では「自由な報道は、有権者に情報を提供し、真実を解明し、政府権力を監視し、対話や議論を促す必要不可欠な役割を担う」と報道の重要性を強調し、トランプ大統領を牽制(けんせい)した。

 政治家と報道機関の間に適切な緊張関係がなければ民主主義は瓦解(がかい)する。米国で起きていることは対岸の火事ではない。問われているのは、炎上をいとわず報じるべきことを報じるという、報道機関の覚悟だ。

週刊朝日  2018年9月7日号

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津田大介

津田大介

津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『情報戦争を生き抜く』(朝日新書)

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