ユニオンの坂倉昇平氏はこう語る。

「今回、謝罪を表明したことは一定の評価ができます。今後は、取れなかった有休の取得を会社に対して求めていきます」

 ユニオンに持ち込まれる有休に関する労働相談は非常に多い。従業員が申請しようとすると、上司から妨害される例が後を絶たない。坂倉氏が続ける。

「最も多いのは『ウチは人が足りないから』という口実で取らせないことです。介護や運送など、休日が固定ではないシフト制の会社で常態化しています。『取るなら代わりの人を自分で見つけてこい』などと上司から言われ、同僚にも頼みづらく断念する人が多い」

 手口はさまざまで、取るのに申請書の提出を求める会社もある。

「特定の申請書があるから、それに書かなければ申請できないというのです。その申請書がどこにあるのかさえ教えてもらえず、ごまかされて取れなかったという人もいます。会社指定の申請書が必要だなんて、法的根拠は何もありません。上司に有休取得を口頭で伝えると、後で『聞いていない』と言われかねません。メールで申請して、思い切って休んでしまうのも一つの手です」(坂倉氏)

 違法な手口がはびこっているのは、労働基準監督署が指導に消極的なことも大きい。

「申請して休んだのに、会社が欠勤扱いにして賃金を支払わなかったら、明確な違法行為になります。その時点で、ようやく労基署が是正勧告を出してくれるのです(労基法39条違反)。申請を妨害されただけでは、違法とはすぐに判断できない。理不尽な話ですが、有休がきちんと取れる会社に変えたいのなら、労働組合を立ち上げて交渉しないとなかなか難しいのです」(同前)

 ややこしいのは、従業員がいつ休むかは原則自由だが、会社側にも休む時期を変える権利があることだ。法律用語で言えば、従業員にはいつ有休を取るかを指定できる「時季指定権」があり、会社側にも「時季変更権」があるのだ。

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法改正でどうなるのか