特に75歳以上の後期高齢者は、要注意だ。意識的にタンパク質を摂取していないと、健康維持のために必要な栄養が足りなくなり、病気や体調不良を引き起こしてしまう。

 厚生労働省の食事摂取基準によると、一日に必要なタンパク質摂取量は、成人男性が60グラム、女性が50グラム。食事に含まれるタンパク質量は、ヒレステーキ100グラムで20グラム、白米茶わん1杯で3.8グラムと、1日分のタンパク質を1食でとるのは不可能に近い。

 さらに、シニアは年とともに活動量が低下することで、食べる量も減りがち。そこで、シニアが、効率的にタンパク質を摂取するためのポイントをまとめた。

(1)まずは量を若いころと同じくとる

 高齢者は若いときと比べて活動量が減っているからといって、タンパク質を減らす必要はない。加齢によって、同じタンパク質量を摂取しても、若いときと同じようには筋肉を維持できなくなっているからだ。

「高齢者は、若い人に比べて食後の筋肉の合成が起こりにくい。だから生活に必要なエネルギーが少なくなっても、タンパク質は若いころと同じ量を、積極的にとってほしい」(同)

 高齢者こそ、意識してタンパク質の多い食材をメニューに取り入れる必要がある。下記の表は、動物性タンパク質と植物性タンパク質が多い食材と部位をランキングにしたものだ。

「まずは、献立でメインの食材を考えるとき、タンパク質量の多いものを選ぶように心がけましょう」(同)

 動物性タンパク質では、意外にも肉より「まがれい」や「くろまぐろ」「かつお」などの魚のほうが、タンパク質量が多い。豆や大豆製品、穀類などの植物性タンパク質を見ると、納豆より高野豆腐やそば、スパゲティのほうが多い。

(2)質も大事、「ロイシン」に注目

 量に加えて意識してほしいのが、タンパク質の質。特に筋肉の合成に不可欠なアミノ酸「ロイシン」の含有量に注目してほしい。

 ロイシンとは、20種のアミノ酸で構成されるタンパク質の中の、九つの必須アミノ酸のうちの一つ。筋肉を増やすための司令塔である細胞内の遺伝子に、筋肉を作るよう働きかける役割を担っている。卵やヨーグルト、鮭などに多く含まれている。ランキング表にはロイシンの量も記してあるので参考にしてほしい。

「近年の研究で、筋肉の合成においては、タンパク質の量だけでなく、“質”も重要という指摘がされるようになりました。筋肉量の維持を踏まえると、タンパク質量だけでなく、ロイシンが多く含まれている食材を積極的に選ぶことをお薦めします」(同)

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最適な献立は?