東京・信濃町の「一行院千日谷浄苑」は、建築家の隈研吾さんらの設計で、昨年9月にできた。
価格は1基90万円で、7寸の骨壺のままならば2体分。粉骨をして分ければ最大8体分まで入る。
花や線香などを持参しなくても、気軽に参拝できる。4200基のうち500基超が10カ月で売れた。
外観はアルミの瓦屋根で、木々のぬくもりにあふれる。
「上質の木をふんだんに使い、それらが瓦屋根で覆われている。屋根に守られるというのが、日本人には大事だと思っています。今は墓地をつくるところがそんなに多くないので、現代に合った先祖供養のシステムだと思います」(隈さん)
墓以外の選択肢もある。樹木葬や海洋散骨、自宅保管(手元供養)などだ。
樹木葬はシンボルツリーの下に、遺骨を埋葬するもので、公営のところも増え始めた。海洋散骨は自然にかえれるイメージがあり、業者に任せれば5万円程度からできる。
熊本県の墓石販売店の「ド・ア」は、リビング供養墓「ルフランの郷」を6月に発売した。リビングになじむ容器に遺骨をおさめ、その上部に好きな花を飾るものだ。
ほかにも、花を飾った小さな収納箱に遺骨を入れる商品もある。アクセサリーボックスのようにコンパクト。花を見ながら、毎日故人を思うことができる。
「ポライトテクノ」(愛知県)の「クリスタルメモリー心晶」は、耐久性のある金属カプセルに遺骨の一部を入れ、透明なキューブ型のアクリルに閉じ込めた。故人名や没年月日、好きな言葉などを刻める。
基本タイプで5万5千円。1月に母親を失った北九州市の名田修さん(68)は、広告を見てすぐに申し込んだ。母の口癖だった「あなたもがんばりよ」を刻んでいる。
墓に関する複数の著書がある冠婚葬祭業「サンレー」の佐久間庸和社長は、墓の選択肢は多様になっているという。
「先祖代々の大きな墓から、一人ひとりの墓にシフトしています。墓石も個人の趣味を反映したデザインが増えています」
従来のイメージを覆すような埋葬の仕方が、これから新たに広まるかもしれない。(本誌・大崎百紀)
※週刊朝日 2018年8月31日号