今回の『アウト・オブ・ザ・ブルース』は、ハリウッドでの録音で、ボズ自身が制作を担当。ベースにウィリー・ウィークス、ドラムスにはジム・ケルトナーが参加。ギタリストにドイル・ブラムホールII、チャーリー・セクストンを迎え、両者にギター・ソロの大半を委ねている。

 ボズ自身が収録曲を解説したセルフ・ライナーをつけ、それぞれの曲への熱い思いをつづっている。ボビー・“ブルー”・ブランドのカヴァーである「アイヴ・ジャスト・ガット・トゥ・フォゲット・ユー」と「ザ・フィーリング・イズ・ゴーン」についてのくだりには、ボズのボビーへの敬愛ぶりが伝わってくる。
 もっとも、いずれの曲もオリジナルを模倣するのでなく、前者ではボズらしくスタイリッシュに、後者ではディープな泥臭さを加味するなど、独自の解釈による歌唱で、個性を発揮している。

 ロス・ロボスのデヴィッド・ヒダルゴから教わったというマジック・サムの「アイヴ・ジャスト・ガット・トゥ・ノウ」での熱唱ぶりや、ボズが感銘を受けたというジミー・リードの「ダウン・イン・ヴァージニア」での素朴でのどかな表現もしかり。

 そうした楽曲はR&B/ソウルやブルースへの敬意を示すだけでなく、ブルースの本質はその切実な感情表現にこそあり、とするボズのブルースへの理解を物語る。それこそがルーツ回帰の狙いだったとみるべきだろう。

 オリジナルの4曲は、ボズの長年の友人のジャック・ウォルラスの提供曲だ。

「ロック・アンド・スティック」では、ジャックがハーモニカを披露。シカゴを本拠にしていたポール・バターフィールド・ブルース・バンドさながらの演奏スタイルだ。彼らのレパートリーだった「ウォーキング・ブルース」をほうふつさせる。

「ゾーズ・ライズ」などは、60~70年代にかけてのホワイト・ブルース・シーンやその音楽的変遷を思い起こさせる。ボズがソロ活動を始めてブルースに取り組んでいたころ、“白人にとってブルース表現が可能かどうか”という命題があった。ミュージシャンたちはそれぞれの解釈でブルースを実践していた。ボズは本作で、当時のホワイト・ブルースの意味を改めて問う意図もあったに違いない。

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