段田安則(だんた・やすのり)/1957年生まれ。京都府出身。青年座研究所を経て、81年劇団 夢の遊眠社に入団。92年の解散まで主力俳優として活躍。菊田一夫演劇賞、読売演劇大賞並びに同最優秀男優賞等、受賞歴多数(取材・文/菊地陽子、撮影/小山幸佑・写真部、ヘアメイク/藤原羊二・EFFECTOR、スタイリスト/中川原寛・CaNN)【公演情報】「出口なし」訳ありの過去を背負った3人(大竹しのぶ、多部未華子、段田安則)が、人生のデッドエンドで何を語るのか――? 世界中で上演されてきたジャン=ポール・サルトル作の戯曲。上演台本・演出は小川絵梨子。8月25日(土)~9月24日(月・祝)新国立劇場小劇場 大阪公演あり
段田安則(だんた・やすのり)/1957年生まれ。京都府出身。青年座研究所を経て、81年劇団 夢の遊眠社に入団。92年の解散まで主力俳優として活躍。菊田一夫演劇賞、読売演劇大賞並びに同最優秀男優賞等、受賞歴多数(取材・文/菊地陽子、撮影/小山幸佑・写真部、ヘアメイク/藤原羊二・EFFECTOR、スタイリスト/中川原寛・CaNN)

【公演情報】「出口なし」訳ありの過去を背負った3人(大竹しのぶ、多部未華子、段田安則)が、人生のデッドエンドで何を語るのか――? 世界中で上演されてきたジャン=ポール・サルトル作の戯曲。上演台本・演出は小川絵梨子。8月25日(土)~9月24日(月・祝)新国立劇場小劇場 大阪公演あり

 俳優・段田安則さんはいい意味で、掴みどころがない。

「根は明るいと思うんですが、とにかく気力がない。芝居をやっていない状態の僕は、“生きてて楽しいの?と思うほどのダラダラぶりです(苦笑)。精神は安定しているというか、嫌なことがあっても落ち込まないけれど、嬉しいことがあっても、それほど喜びもしない。普段は大概、つまらん感じですね(笑)」

 そんなふうに言いながら、カメラの前に立つと、人としての色香のようなものがすうっと立ちのぼる。

 映像では“名脇役”の印象が強い段田さんだが、舞台の世界では、演出家や俳優からのラブコールが後を絶たず、翻訳物から書き下ろしのコメディーまで、幅広い役を演じてきた。次なる舞台は、「出口なし」。哲学者サルトルの劇作家としての代表作に、大竹しのぶさんと多部未華子さんと、わずか3人で挑む。

「設定自体はとてもナンセンスです。地獄と思しき場所に、見ず知らずの男が1人と女が2人。偶然なのか必然なのか。3人は、同じ部屋に入れられ、扉はあるのに出るに出られない。それぞれが、互いの傷を舐め合ったりしているうちに、人間の本質なんかが見えてきて……。でもその“本質”が何を意味しているのか。僕自身もまだよくわかっていない(笑)。でも、観終わった後に、説明はつかないけれど心に響く芝居もある。今回もそういうふうになればいいと思いますけど」

 高校生の頃から、自分の中にも善人の部分、悪人の部分の両方があることを自覚していた。だから、芝居をするときは、できるだけ批評的に、多面的に演じるよう心がけている。

「いいホン(台本)とは何かと聞かれたとき、いろんな考え方があるでしょうが、僕なら“人物が多面的に描かれていること”を挙げるかもしれない。“この人はこの色”とはっきりしている脚本は、どうにもつまらないような気がしてしまうんです」

 社会不適合者とまではいかないが、とにかく何事も飽きっぽい。学生の頃から漠然と、「将来、毎朝同じ時間に起きて、会社に行くという生活は無理だろう」と感じていた。

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