【文豪の湯宿】一人旅で離婚を決断? 森鴎外が“惚れた”温泉 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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【文豪の湯宿】一人旅で離婚を決断? 森鴎外が“惚れた”温泉

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鈴木裕也週刊朝日
私生活で悩んでいた鷗外を心底癒やした松川渓谷の絶景

私生活で悩んでいた鷗外を心底癒やした松川渓谷の絶景

当時は無名だった山田温泉を訪れたのは親友の軍医・賀古鶴所の紹介

当時は無名だった山田温泉を訪れたのは親友の軍医・賀古鶴所の紹介

 文豪たちの作品に登場する温泉宿を訪ねる連載「文豪の湯宿」。今回は「森鴎外」の「緑霞山宿 藤井荘」(長野県・山田温泉)だ。

【森鴎外が“惚れた”温泉の写真はこちら】

*  *  *
 鴎外の人生は旅の連続だったといってもいい。公務で日本中を回った以外にもドイツ留学や中国、台湾など、海外も訪れている。だが、休暇を取ってまでの個人的な旅行というと明治23年8月18日から26日まで滞在した山田温泉しか思い当たらないと、末弟の潤三郎がのちに記している。「舞姫」を世に出し、文筆活動を始めたばかりの鴎外が、結婚して1年半の妻・登志子を家に残して一人宿泊した先が藤井荘だった。

 この旅の様子は旅行記「みちの記」に描かれている。長野駅から先は人力車と牛の背中しか“足”がない2日がかりの険しい旅路だった。

〈日暮るる頃山田の温泉に着きぬ。ここは山のかいにて、公道を距(さ)ること遠ければ、人げすくなく、(略)藤井屋なり〉

 だが鴎外は、この地の自然や湯を満喫した。質素な食事にも舌鼓を打つ。特に、宿から見える松川渓谷の眺めに惚れ込み、帰京後に主人へ書状を送り「土地を譲ってほしい」と懇願したが、断られているほどだ。

 帰京から3カ月後の11月27日、鴎外は妻・登志子と離婚。“決断”の一人旅だったのかもしれない。(文/本誌・鈴木裕也)

■緑霞山宿 藤井荘(りょっかさんしゅく ふじいそう)
長野県高山村山田温泉3563

週刊朝日  2018年8月17-24日合併号


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