また、食堂でエプロンをしている入居者が多いホームも注意が必要。

「赤ちゃん扱いはせずに、汚れたら着替えさせるというホームもありますから。ほかに整理整頓や掃除ができているか、においケアはしているか、また入居者の爪が伸びていないかなどで、人手不足のホームを推測することが可能です」(末木さん)

 最近は自然災害で高齢者が犠牲になるニュースも多く、高齢者ホームの世界でも、防災は重要なキーワードに。入居者の命を守る災害対策にも、事業者の質がくっきり表れる。

 例えば、法律上義務化されていないスプリンクラーや火災通報装置の設置は、コストを抑えたい事業者にとっては、格好の手の抜きどころ。濱田さんによれば、そんななかしっかり防災設備を設置し、災害用の食料を備蓄したり、真剣に防災訓練をしたりしているようなホームは、「プロのホーム」と言えるそうだ。

 このほか職員の入居者の呼び方にも施設のスタンスが見えてくる。名字で○○さんと呼ぶホームが多いが、「おもてなし」が高齢者ホームのキーワードになっている昨今は、「○○様」も増加。ときに入居者全員を「○○先生」と呼ぶホームも実在するらしい。

 かと思うと、家族のようなアットホームな付き合いをしようと、入居者を○○ちゃんというように名前+ちゃん付けや、あだ名などで呼ぶホームも。

 高齢者ホームには大きく、ビジネスライクなマニュアル至上主義のホームと、昔ながらのアットホームな雰囲気を重視するホームの2種類があるというのは、小嶋さんだ。

「最近のホームではマニュアル型が主流ですが、入居者の性格によっては、アットホーム型が心地よい人もいる。子ども扱いしているように聞こえるちゃん付けの呼び方も、人によっては理想のホームの証しになることもあるでしょうね」

 最後に朗報。たくさんのダメ出しポイントを紹介したが、専門家の皆さんによれば、あまたのツッコミどころをクリアした高齢者ホームも、世の中には数多く存在するとのこと。運命のホームは、どこかに必ずある。じっくり、慎重に、「あがり」を目指せ。(ライター・福光恵)

週刊朝日  2018年8月17-24日合併号より抜粋