それでは、辺野古移設が中止になったとき、「普天間を固定します」と言えますか。民主主義国家ではありえない話です。私は、「普天間は継続できない」し「辺野古への移設も認めない」という状況下で、政治的な決着があると思っている。

 今の日米同盟は砂上の楼閣です。米国も、次に大きな事故が起きれば日米安保体制が吹っ飛ぶことはわかっている。私は、辺野古移設を止めることができたら、普天間も閉鎖されると思っています。

──知事に就任してから、くじけそうになったことはありませんか。

 戦後、動かし切れなかったものが、動かせるか。繰り返しますが、沖縄の問題は日本全体の問題です。

 ところが、東京で記者会見をしても、みんな言葉遣いは違いますが、記者は「なぜ、勝てない闘いをやっているのか」と質問してくる。言葉を変え、いろんな形で説明をするが、そんな質問が出るのは本土の国民が無理解だから。その意味で、私は誰よりも絶望を感じているんです。

 ですが、20歳の女性が殺害されたのに、問題の根本にある日米地位協定の改定もできず「沖縄に力はない。しょうがないさ」「経済振興策をもらおう」などと、政治が寝転がってはいけない。

 沖縄に生まれ、なおかつ政治家を志した人間は、やり抜き通さなければならないことがありますから。沖縄のご先祖は、私らよりもっと苦労している。その苦労を引き継いで今の沖縄の文化があり、私らの人格がある。だから、子や孫のために、沖縄の負荷が小さくなるよう政治は全力を挙げなければなりません。

──妻の樹子さんは「万策尽きたら夫婦で一緒に(辺野古基地前に)座り込むことを約束している」と話しています。知事も同じ考えですか。

「辺野古移設阻止」は自分の信念だけれども、それが通るか通らないかは、正直言ってわかりません。私は、ピストル一発で消える人間ですから。

 その意味では、勝敗は言えない。それは近くで見ている妻もよく知っています。

 座り込みについて妻が言ったことは、話が違うわけではありません。辺野古移設阻止が挫折して、一人間、一市民、一県民に戻った場合に何をするかは、沖縄県民のみんなと一緒です。

(構成・西岡千史)

※週刊朝日オンライン限定記事(週刊朝日増刊「朝日ジャーナル 2016年7月7日号」より)