俳優・津川雅彦を育てた3人のうち2人はすでに亡くなり、兄も他界。60歳を過ぎたころから、死は遠いものではなくなったという。最後に死生観について問われるとこう語った。

「死は自分の意思ではどうにもならない。今はもう、死は怖くはありません」

 俳優としての人生に未練はない、という感じの語り口だった。

 写真撮影のときは、俳優らしく、鼻からチューブを外してポーズを決め、目には輝きを取り戻した。だが、”らしさ”が最も表れたのは、去り際だった。送迎の車に乗りこむと、わざわざ車の窓を開けて

「今日はとても楽しかったです。ありがとうございました」

 と深々と頭を下げた。誰に対しても偉ぶらない姿勢こそ、大スターの証だった。(本誌・鎌田倫子)

※週刊朝日オンライン限定記事