「経済団体やトラック協会など運送業界に協力を仰いで、交通量を可能な限り減らしてもらいます。道路の通行量は平日の15%減で、休日並みを目指します」

 また、鉄道のラッシュ時間帯のピークは平均混雑率が165%(東京圏主要31区間)だが、150%以下を目標にしている。各企業に対して休暇や時差通勤、テレワークなどを奨励してもらう一方、鉄道会社とも増便や車両編成の増量を検討しているという。

「それでも渋滞を招いてしまった場合は、高速道路の料金所の開放レーン数の制限や入り口の閉鎖などの規制を警察が行うことになりますが、あくまでイレギュラー時の対応です」(同前)

 人々が溢れかえる混雑時の警備も課題だ。約87万人が訪れた隅田川花火大会で警視庁は、電機メーカーのパナソニックの協力を得て、AIを利用した新技術を実験したという。

「監視カメラの映像の中から人物を自動検知する技術などによって、人の移動予測を行います。そのことによって警備の効率化を図り、不審者の検知などテロ対策にも寄与します」(パナソニックシステムソリューションズジャパン広報)

 輸送と警備の両面で頭が痛いのは、東京の臨海部の晴海埠頭に建設される五輪選手村と各競技場を結ぶルートだ。築地市場の移転延期によって、市場跡地を通るトンネルの開通が五輪に間に合わなくなった。現状では、地上部に片側1車線の暫定道路を整備して対応するほかない。建築エコノミストの森山高至氏がこう指摘する。

「円滑な選手の輸送のためには、一般車両を入れないなど対応を迫られるでしょう。首都高速も現実的には規制せざるを得ないと思います。組織委や都はクレームを怖がってやろうとしませんが、輸送区間の閉鎖試験が必要です。それをしないと事故時の対応や、救急車など緊急車両のルート確認もできません。また、タワーマンションが林立する臨海部の地下鉄駅の混雑は現状でも深刻です。ラッシュ時は、改札前もホームも大混雑で身動きできない。電車が来ても乗ることができないほどです」

 東京が五輪パニックにならないことを祈る。(本誌・亀井洋志、太田サトル、田中将介)

週刊朝日  2018年8月17-24日合併号