「ナンシー関に賞味期限はない」いとうせいこう×武田砂鉄対談

週刊朝日

いとうせいこう(左)/1961年、東京都生まれ... (16:00)週刊朝日

いとうせいこう(左)/1961年、東京都生まれ... (16:00)週刊朝日
 ナンシー関(本名・関直美)さんが、2002年に39歳で急逝するまで本誌で連載した伝説的コラム「小耳にはさもう」のベスト版が発売される。彼女の鋭い批評と消しゴム版画は今も古びていない。「ナンシー関」の名付け親でもある作家・いとうせいこうさん、ベスト版の作品を選んだライターの武田砂鉄さんに語り合ってもらった。

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*  *  *
いとう:これは「小耳にはさもう」の連載全部から選んだの?

武田:はい。週刊朝日の連載が450本ほどあり、全て読んで77本を選びました。

いとう:それ、すごいなと思って。

武田:学生時代からずっと読み続けてきましたから、田村亮子は当然入れる、中山秀征も当然、川島なお美も当然……と選んでいたら収拾がつかなくなりました。「古びていない」との尺度で判断しようにも、対象の芸能人は古びても、視座が古びるはずもない。ベスト選集でありつつも現代性の強いものを抽出したつもりです。

いとう:難しいよね。芸能界も世の中も変わりましたから。「SNSがあったかなかったか」みたいなこととも関わってくるけど、ナンシーが書いていたころは、お金を持ってる人も持ってない人も、一緒に豊かになって世の中をよくしていこうという空気があったと思うのね。それ、いまはないもん。仮にいまナンシーがいたとして、もうあのころみたいにニヤニヤしてセレブリティーの世界を見てられないんじゃないの?って思うくらい。

武田:SNSの影響は大きいですね。今やどんな芸能人でもファンがとても近くにいて、当人がファンを囲い込みやすくなっている。当人が認めた記事が「これ、すごくいい内容だから、読んでみて」と拡散され、それが「良い」記事とされる。

いとう:安倍・麻生と同じだね。

武田:そうですね。「うん、これはオレの思いをすくい取ってくれている」と。逆に「この記事はどうかと思う」と本人が首をひねった記事は、読むに値しない、むしろ糾弾すべきものと見なされてしまう。

 これまでなら、対象との距離を冷静に保った“読むべき批評”として存在していたかもしれないのに、ファンの人たちが忠誠心を示すために励むパトロールに引っかかってしまい、そのテキストが独立して評価される機会を奪われることがあります。つまり、ファンじゃないからダメ、と。

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