痔核は徐々に進行すること、最初のうちは症状がつらくないことなどで、受診を引き延ばす人も多い。出血や脱出があったら、肛門科病院を受診してほしいと寺田医師は言う。

「出血は大腸がんなど、ほかの病気が原因のこともあります。受診して診断を受けてください」

 なかには、大腸内視鏡検査などで内痔核を指摘されたので、切除してほしいと受診する人もいるという。しかし、症状がなければ、治療を考える必要はない。

 一方、痔瘻は肛門の腫れや痛みがあらわれるので、すぐに受診する人が多いが、排膿してもらうと症状がおさまるため、再発しても排膿だけしてもらい、根治治療を受けない人もいる。

「放置しても、浅い痔瘻から深い痔瘻に必ずしも進行するというものではありません。しかし早い段階で治療すれば、瘻管を安全に切除できる確率は高いといえるでしょう」(寺田医師)

 日帰り手術についてはどう考えればいいだろうか。仕事を休めない、介護や家事で夜、家を空けられないという人では、日帰り手術に惹かれる人もいるだろう。一般的に、高い技術をもつ医師がおこなうなら、痔核のLE、ALTA療法、さらに痔瘻でも日帰り手術は可能だという。手術数の多い病院で受けるなら心配はいらないだろう。

 ただし、ALTA療法は根治療法にはならない。再発率は10年で1~3割だが、数年で再発するケースも少なくないという。ALTA療法でどれくらいよくなるのか、再発のリスクはどれくらいあるかなど、説明を求め、納得したうえで治療を受けるようにしよう。

 痔核も痔瘻も、入院は3~7日程度ですむ。抗血栓薬を飲んでいるなど、持病がある場合は、入院するほうが安心だ。

 入院の場合には、退院後の生活の指導もおこなわれる。排便の際にはあまりいきまない、トイレにいる時間を5分以内にする、起床時のコップ1杯の水で自然な便意をうながす、食物繊維を積極的にとって便秘・下痢を予防するなど、排便習慣の改善を中心に指導される。同じような生活をしていると別な場所に痔が起こる可能性もあるため、生活の見直しは大切だ。

 これまで述べてきたように、痔の手術では、技術と経験値をかねそなえた医師・病院を選ぶ必要がある。

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