関節リウマチの治療で使用される薬剤は、免疫の暴走を抑える働きが中心となる。その第一選択となる薬剤が、国内では1999年に承認されたメトトレキサート(MTX)という内服薬である。慶応義塾大学病院リウマチ・膠原病内科教授の竹内勤医師は言う。

「関節リウマチと診断されたら、原則としてまずMTXを服用し、その後も続けることになります。このため、患者さん全体の7~8割にMTXが処方されているのではないでしょうか」

 副作用などでMTXを服用できない患者には、別の抗リウマチ薬が処方される。

「MTXは最大服用量よりやや少なめから始め、一般的に2~3カ月で、服用できる最大量まで増やしていきます。そのころには多くの患者さんの症状が改善し、寛解に近づくことができます。以後はその最大量の服用を続けます」(針谷医師)

 新たに発症した患者なら5~6割が、このMTXだけで寛解か、寛解に近い状態まで到達できるとされている。しかし、残りの4~5割はMTXを最大量まで増やしても、あるいは、その過程で口内炎や吐き気などの副作用で十分な量が服用できなくなり、いずれも寛解を達成できていない。

 それでも、第二段階の治療で効果を得られたり、効果を上乗せできたりする薬剤が登場し、しかもラインアップが充実し選べるようになってきた。その一つが生物学的製剤である。

 通常の薬剤は化学物質を合成してつくるが、生物の細胞につくらせた物質を使うのが生物学的製剤である。MTXはいわば広く免疫の活動全体を抑えることで「暴走」も抑えるのに対して、生物学的製剤は免疫を担う特定の物質の働きをピンポイントで抑え、その分、抑え方も強力になる。ターゲットとなる物質ごとに、TNF阻害薬、IL-6受容体阻害薬、T細胞共刺激分子阻害薬の3種類がある。

 関節リウマチ治療薬としては、2003年のインフリキシマブから、17年のサリルマブまで、TNF阻害薬5剤、IL-6受容体阻害薬2剤、T細胞共刺激分子阻害薬1剤、合計8剤が承認され、健康保険の適用となっている。いずれも皮下注射か点滴で受ける。皮下注射の多くは糖尿病のインスリン注射のように自己注射も可能である。

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