ウェイロンの一曲は「ハンクならどうする?」。ナッシュヴィルの保守的な音楽シーンに変化が必要だと歌い、もしハンク・ウィリアムスなら?と疑問を投げかけた名曲だ。もう一曲は「ホンキー・トンク・ヒーローズ」。苦労して稼いだ金をばくちで失った“愛すべき負け犬 役立たずの酔っ払い”と歌う。

 ウェイロンは2002年に他界したが、改めて彼の業績が評価されることだろう。ウィリーはオースティンに拠点を移したが、ウェイロンはナッシュヴィルにとどまった。ナッシュヴィルの旧態依然とした制作スタイルに反抗した新たなスタジオが誕生し、“アウトローズ”たちの拠点となったからだ。

 本作にも収録されているトムポール・グレイザーが開設したヒルビリー・セントラルがそれである。ウェイロンだけでなく、若いシンガー・ソングライターたちがアルバムを生み出していった。
“アウトロー・カントリー”は、日本でも注目され、カントリー・ミュージックのファン以上にロック・ファンの間で話題となった。

 ジャニス・ジョプリンが歌った「ミー&ボビー・マッギー」の作曲者クリス・クリストファーソンも“アウトロー”とみなされた1人だ。ナッシュヴィルのCBSスタジオの雑役夫として働きながら、ソングライターとしての評価を獲得。“ナッシュヴィルの壁を破った”とされるジョニー・キャシュらへの敬意を込めた「巡礼者―33章」という曲が本作に収録されている。

 そのジョニーの曲も本作に入っている。“アウトロー”たちの心の支えになった1人、ジャック・クレメンツの薦めでジョニーがカヴァーしたザ・ローリング・ストーンズの「ノー・エクスペクテーションズ」である。

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