松原:貧しい地域を一軒一軒歩いてきた学会の人たちと、インテリである政治家とのずれが無視できなくなっていますね。賢い人たちは頭で動いて、安倍さんのほうに流れている。

御厨:働き方改革では、データが間違っていたが、与党が「今回は継続審議にする」とか先に対応するべきだった。しかし、選挙で勝っており、とにかく突っ込めという状況になっている。昔の自民党は強行採決もするが、せめて話し合いはした。取引をして別の社会党の法案を通すなど、保守のゆとりがあった。政治技術を駆使せず、非常に荒々しいやり方になっている。

松原:アマゾンなどのプラットフォーム企業が世界の売り上げトップテンを独占し、そこでの自由な働き方が注目を集めています。働き方改革には、それにチャレンジする日本型組織とは何かといったビジョンを含めた議論ができると期待しましたが、野党は「過労死」や「残業代ゼロ」という点にとどまった。安倍さんの言う「多様な働き方」も連合や経団連など財界の古い人たちから見たもので、金融の技術開発やディーラーを想定している。今の国会ではほとんど諮問会議の案を丸のみしており、政治家も官僚も政策を考える力が低下しています。

御厨:そろそろ通信簿をつけますか。これまでの話では点数をつけるのが絶望的になる。

松原:官邸は全てゼロ回答だったが、ぬらりくらりと頑張った。

御厨:やっている感はある。野党が言いだす政策はすぐに検討させ、奪ってしまう。

松原:アベノミクスもあちこちで言われている政策を全部取り込んでいた。労働時間規制も普通は左派が言う内容だった。そうすると野党も反対しにくくなる。

御厨:本人のイデオロギーが右派なのに、実務は左派のことをやっている。

松原:仕事はBとCの間だが、官僚システムを腐らせたということを含めると、Dですね。

御厨:自民党は「風が吹きすさぶ自民党」といった感じ。党本部があるだけで、組織的には機能していない。Dにしておきましょう。

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