長細いデッキがあり、家族5世代が集える(提供/LIXIL住宅研究所)
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長細いデッキがあり、家族5世代が集える(提供/LIXIL住宅研究所)
人生100歳時代の未来住宅の外観(提供/LIXIL住宅研究所)
人生100歳時代の未来住宅の外観(提供/LIXIL住宅研究所)

 LIXIL(リクシル)グループのLIXIL住宅研究所は7月31日、ひとつ屋根の下に五世代が暮らす「~人生100歳時代の未来住宅~5世代の家」を発表した。大家族が一緒に暮らし、ゆるやかなつながりを作りつつ、お互い窮屈にならないように、建築には様々な工夫をこらしたという。

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 同社は「業界初の試み」というが、住宅業界のこれまでにある多世帯住宅とはどこが違うのか。今城幸社長は自信ありげにこう話す。

「これまではバリアフリーばかりを大事にする家でした。私どもは家の中で体を鍛え、元気に長生きして暮らすことに着目しました。東京以外の地方へ行けば、このくらいの広い土地はいくらでもあります」

 理想とする延べ床面積は210平方メートルくらい。

 家の中に平気で段差や階段があるのは高齢者にとって少々心配になったが、「バリアフリーとしなかったのは、足腰が悪くなったらそもそもメゾネットルームに住むことができない」(担当者)という考え方でもある。担当した建築家の中山眞琴氏はこう話す。

「あえて階段を設けることで、運動不足の解消になるし、空間を分け、プライバシーを守ることにもつながります」

 その階段の裏には棒がとりつけられ、つかまって筋トレができるようになっていた。そう言われてみれば、目の前に棒があるとついぶらさがりたくなるもの。

「体を鍛える家」というコンセプトなので、人生100歳時代の高齢者の足腰の衰えを防止するという。子供たちが遊びながら足が速くなり、投げることや打つことができるように、昔ながらの運動をとり入れて300種類の運動プログラムも設けられた。

 実際にモデルハウスを訪れたというパルクールアスリートの泉ひかりさんは、

「私の場合は父が建築家で、子どもの頃、家の中でいろんな動ける場所の工夫をしてくれていました。それがパルクールを選ぶことになりました。無意識のうちに体を動かせるようになるのは大変いいと思います」

 想定する家族像は、85歳、65歳、45歳、25歳とその子供世代。

 5世代をつなぐ場所は、1階にある「コネクティングルーム」。ここには長細いデッキが置かれている。

「デッキを長細くしたのは、みんながぐるぐる回遊できるようにしました。ダイニングルームを大きくしたような感じです。こっちにおいでという感じになるように考えました」(前出の建築家・中山氏)

 少子高齢化が進み、年齢に関わらず一人暮らし世帯が増えた。結婚をしない、しても子どもを作らないという人も多くなった。

「東京に出て、ワンルームマンションとかになって、バラバラに暮らすようになった。でも、小さい頃は家族との楽しい思い出を心のどこかに持つ人は多いはず。こういう時代だからこそ、ビッグファミリーという世界をめざしたい」(同)

 気になる価格はいくらか。

「最新の設備をフルスペックですべて入れるとだいたい8500万円から8700万円くらい。全てそろえると高くなるが、小さなユニットにして、プライスダウンを図ることもできます」(今社長)

 将来、家族構成が変わった場合、他人に貸す民泊用にも使えるようにしたという。子どもたちが駆け回り、高齢者も健康で長生き。現状、なかなか実現できる環境がないが、それを可能にする家なのか。(本誌・上田耕司)

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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