日銀は「統計の精度を高めたものでミスという認識ではない」(広報課)と釈明するが、長年誤った数字をもとに政策議論が行われてきた。金融業界からは、「日銀の統計への信頼性が揺らぎかねない」(大手証券アナリスト)と戸惑いが広がる。経済アナリストの森永卓郎さんはこう言う。

「家計の投信の保有額が増えているという統計結果には、ずっと違和感を持っていた。こんなミスが起きるのは日銀が劣化していると言わざるを得ない」

 森永さんは国内で販売されている投信は手数料や信託報酬が高く、個人投資家にはすすめにくいという。

「投信を買っても、高い手数料などで損をしている人は多い。個人が投信離れをしていることがわかったのを機会に、金融業界は襟を正してほしい」

 結局、誤った統計結果で得をしていたのは、「貯蓄から投資へ」の政策目標を掲げていた政府のようだ。

「政府はアベノミクスの一環として、日銀に株を買わせて株価をつり上げ、個人も投資に向かっているとアピールしてきた。実態は『官製相場』で、個人が幅広く参加する健全な金融市場になっていなかった」(別の大手証券アナリスト)

 政府や日銀の統計を、そのまま信じてはいけない。(本誌・多田敏男)

週刊朝日  2018年8月10日号