【文豪の湯宿】坂口安吾「ラムネ氏のこと」に書かれた宿は“美肌の湯” 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

【文豪の湯宿】坂口安吾「ラムネ氏のこと」に書かれた宿は“美肌の湯”

このエントリーをはてなブックマークに追加
鈴木裕也週刊朝日
安吾宿泊当時の「富士見館」を、2代目当主が「あさま苑」と改名

安吾宿泊当時の「富士見館」を、2代目当主が「あさま苑」と改名

安吾がひと夏滞在した「松の間」には、水彩画家の丸山晩霞も好んで宿泊した

安吾がひと夏滞在した「松の間」には、水彩画家の丸山晩霞も好んで宿泊した

 文豪たちの作品に登場する温泉宿を訪ねる「文豪の湯宿」。今回は「坂口安吾」の「あさま苑」(長野県・奈良原温泉)だ。

【文豪がひと夏滞在した「松の間」の写真はこちら】

*  *  *
 昭和9年、ナンセンス小説家として芽が出たばかりの坂口安吾は28歳。2人の友人を次々と亡くし、生に対する不安を抱えていた。その翌年、親友の翻訳家・若園清太郎が肋膜炎に侵される。安吾は彼の療養のために空気のいい信州に温泉宿を見つけ出し、一緒にひと月半ほど滞在した。

 この時の様子が、教科書にも取り上げられた随想「ラムネ氏のこと」に書かれている。

〈私はしばらく信州の奈良原という鉱泉で暮らしたことがある。(略)鹿沢温泉へ赴く途中、雷に見舞われ、密林の中へ逃げた。そこで偶然この鉱泉を見つけたのだ〉

 随想では、安吾も清太郎も鯉と茸づくしの宿の料理に辟易したと書かれているが、これは“創作”の可能性がある。佐久鯉を交えた季節料理は今でも人気のあさま苑名物。しかも安吾は、療養生活で体調の回復した清太郎が帰京した後も、一人宿に残り、名物料理を食べ続けた。滞在中は長編小説『狼園』の執筆に専念。連載第1回分を書き上げた。

 安吾も入った温泉は沸かし湯だが、100%源泉で、炭酸混じりの美肌の湯として多くのファンがいる。

(文/本誌・鈴木裕也)

■あさま苑(あさまえん)
長野県東御市新張2638

週刊朝日  2018年8月3日号


トップにもどる 週刊朝日記事一覧

続きを読む

おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事

あわせて読みたい あわせて読みたい