帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「死を生きる」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「死を生きる」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
なぜ認知症と睡眠は関係がある?(※写真はイメージ)
なぜ認知症と睡眠は関係がある?(※写真はイメージ)

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。死ぬまでボケない「健脳」養生法を説く。今回のテーマは「認知症と睡眠時間の関係」。

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【ポイント】
(1)脳に老人斑を作らないためには寝ること
(2)昼寝が認知症予防にプラスに働く
(3) 眠れない人は睡眠薬を飲んでもいい

 認知症と睡眠は関係が深いようです。

 アルツハイマー型認知症の引き金になると見られているのが脳内でのアミロイドβ(タンパク質の一種)の沈着です。この沈着が起きると脳に老人斑(アミロイド斑)が生まれます。動物実験で対象の動物を断眠(眠らないように)すると、脳のアミロイドβの沈着が3倍に増えるというのです。

 まだ、はっきりはしていないのですが、日中の活動で脳内に生まれたアミロイドβは、睡眠によって脳から排出される仕組みになっているようなのです。ですから、よく寝ることが脳に老人斑を作らない対策です。

 ところが、年をとると眠ることが難しくなります。患者さんからも様々な訴えを聞きます。「寝つきが悪い」「夜半に目が覚めて眠れない」「夜間頻尿で何度も起きる」

 睡眠を促進するのは松果体ホルモンであるメラトニンです。このメラトニンの分泌が年齢の増加とともに減少するのです。アルツハイマー型認知症では、さらにメラトニンが減少してしまうので、睡眠が短くなってしまい、それでアミロイドβを排出できないという悪循環が生まれます。

 睡眠は年齢によって、かなり変化します。

 欧米の約3500人を対象にした調査では、平均睡眠時間は5~10歳では8時間以上ですが、30~65歳は6時間台、70歳をすぎると5時間台でした。

 ですから、年をとったら8時間睡眠を目指すというのは、もとより無理があるのです。睡眠量が減って、アミロイドβが沈着するのは、ある程度、目をつぶらなければならないのかもしれません。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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