(左から)テイ・トワワ、バカリズム、砂原良徳によるSRATM
(左から)テイ・トワワ、バカリズム、砂原良徳によるSRATM
SRATMにとっては3作目、メンバーも3人、ということからタイトルは『3(さん)』(COCB―54263)に決まった
SRATMにとっては3作目、メンバーも3人、ということからタイトルは『3(さん)』(COCB―54263)に決まった

 DJでトラック・メーカー。ギターやピアノでなくラップトップパソコンを楽器として操るテイ・トウワの変名プロジェクト、Sweet Robots Against The Machine、略してSRATMが16年ぶりに復活した。新作『3』を発表した。

【アルバム『3(さん)』のジャケットはこちら】

 メンバーはテイのほか、2人。1人は、SRTAMのファースト・アルバムから一緒にやってきた元電気グルーブの“まりん”こと砂原良徳。テイと砂原は現在、ともに高橋幸宏が率いるMETAFIVEのメンバーでもある。もう1人は、異色のお笑いタレントで、脚本家、作家でもあるバカリズムだ。

 テイは中学のころにYMOに憧れ、予備校時代には自作したテープが坂本龍一のラジオ番組で紹介された。美大を経てニューヨークに留学中、ロシア人とアメリカ人のカップルとDeee―Liteを結成し、世界的な評価を得た。日本に活動の拠点を移して「Future Listening!」でソロ・デビュー。最近では草間彌生がアート・ワークを手がけた『LUCKY』、続く『CUTE』、『EMO』など豪華ゲストを迎えたソロ作が話題を呼んできたが、今回のSRTAMはソロ作とは異なるスピンオフ作だという。

 全10曲中、テイは8曲、砂原が2曲を作曲。この2人はいわば裏方で、主役は、歌詞を書き、2人のテクノ・ポップをバックに歌い、語り、ゲストの女優陣と会話するバカリズムだ。

 そもそものきっかけは、『LUCKY』の収録曲で、高橋幸宏のヴォーカルをフィーチャーし、今ではMETAFIVEの主要曲でもある「Radio」の歌詞を女優が朗読。それに触発されて“スポークン・ワード”的なものを、ということから始まったという。

 テイは坂本龍一らとダウンタウンの2人によるGEISHA GIRL、今田耕司とのユニットKOJI1200を手がけたこともある。今回はバカリズムとの共演で、テクノ・スタイルの音楽と語りを組み合わせた画期的な楽曲をめざした。テイに言わせると、“スポークン・テクノ”という新ジャンルの誕生だ。

 学生時代からテイや砂原の作品に親しんできたというバカリズムにとっては、憧れの2人との共演。臆することなく異才ぶりを発揮している。ユーモラスでナンセンス、くすぐりがちりばめられた歌詞、ソロの語り、女優をパートナーに迎えての会話の食い、間合いの余白が物語るクールな演者としてのたたずまい。共演する女優陣の個性も含め、組み合わせが絶妙だ。

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小倉エージ

小倉エージ

小倉エージ(おぐら・えーじ)/1946年、神戸市生まれ。音楽評論家。洋邦問わずポピュラーミュージックに詳しい。69年URCレコードに勤務。音楽雑誌「ニュー・ミュージック・マガジン(現・ミュージックマガジン)」の創刊にも携わった。文化庁の芸術祭、芸術選奨の審査員を担当

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