94年の松本サリン事件では、村井秀夫が乗っていたサリン噴霧車を運転した。

 95年7月、埼玉県大宮市(現さいたま市)のマンションに潜伏しているところを見つかり逮捕された。かくまっていた女性は、恋愛関係にあった「オウムシスターズ」の次女。恋愛禁止の教団内でも、例外的に交際を黙認されていた。

 法廷では検事と激しくいがみ合うなど、しばしば好戦的な態度をとった。教団内での自分の立場を「しらけていた」と説明。91年に教団がドラム缶を改造して作った粗末な「潜水艦」に乗るよう指示され、事故死しそうになったことについて聞かれると、

「はっきり言って、麻原さんをぶちのめしても許せないって気持ちがすごいあった」

 と、教団へのいら立ちを吐露。松本サリン事件については「教団のすることはバカで間抜けなことばかり」であり、「鼻水を出させる程度のものと思っていた」と、殺意を否認した。一方、信徒たちがマインドコントロールされていたと言われることについては、「そういう言葉で納得するのは簡単だが、そんな言葉でごまかしたくない」

 と、明確に否定した。2007年10月、死刑が確定した。

■証言拒んだ「沈黙の男」
<横山真人(よこやま・まさと)>

(1)生年月日:1963年10月19日
(2)最終学歴:東海大工学部
(3)ホーリーネーム:ヴァジラヴァッリヤ
(4)役職:科学技術省次官
(5)地下鉄サリン事件前の階級(ステージ):菩長補

 神奈川県出身で、少年時代は剣道や美術に熱中。地元の東海大学に進み応用物理学を専攻した。湘南にあるキャンパスでは、いつもTシャツにジーパン姿で通し、友人たちとの会話では聞き役だった。

 1986年4月、卒業と同時に中堅の電子部品メーカーに入社。群馬県の工場に配属されて産業用ロボットの設計・製造を担当し、独身寮から通った。

 自己表現が苦手だったのか、新入社員を紹介した社内報の自己PR欄は、生年月日と血液型しかない。入社1年目の夏、長期休暇から戻ると同僚に、

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出家を反対する家族に「人類を救うため」