「村井は3月18日、『大至急、作らないとダメだ』と土谷に指示し、前夜に約700グラムのサリンができあがりました。それを20日朝、霞ケ関駅などでバラまいたのです。麻原は『ハルマゲドン(人類最終戦争)が起こるから教団は武装しなければならない』と言い、VX、ソマン、イペリットガスなど多くの化学兵器を土谷に作らせていました。当時、土谷は後悔した様子は微塵もありませんでした」

 オウムは最盛期、在家信者1万4千人、出家信者1400人を抱える組織にまで拡大したが、公安調査庁によると、サリン事件後は信者数を千人まで減らした。

 だが、組織の再興に取り組み、99年に1500人まで回復。その後も微増の傾向を示している。2007年、オウムは現在「アレフ」を名乗る主流派と上祐史浩氏(52)が率いる「ひかりの輪」の両派に分裂。昨年の信者数は両派を合計して1650人。いずれも依然、麻原の影響下にあるとされる。

 昨年の資産額は両派を合計して6億9千万円。00年と比べて17倍以上の増加となった。アレフではお布施を集め、ひかりの輪では寺院を巡るツアーを企画するなどして、積極的に資金源を確保しているという。

 東京都足立区でオウム対策の住民運動を行う男性はこう語る。

「施設に出入りしている信者数名が、駅で若いころの麻原彰晃の写真を眺めていました。近所の女子大生が、『ヨガに興味はないか?』と誘われたこともありました。信者は何をやっているかわからず、恐ろしい。早く解散してほしいです」

 なぜ、あれだけの凶悪事件を起こした団体が、求心力を持ち続けているのか。

「新しく入信する人たちの動機は、『悪の組織だと思っていたけど、教義を聞いてみたら、すごいことを言っているじゃないか』というもの。単純に、『頭のおかしな集団がいて、危険だから監視しろ』と責め立てるだけでは、問題は永遠に解決しない。客観的な視点を踏まえた分析が必要です」(元信者)

(本誌取材班)

週刊朝日 2015年3月27日号より抜粋、加筆