「退職金が出たときに最低、1500万円は取り分けておくことです。老後、多くの方が一番不安に思っているのが『介護』と『医療』にいくらかかるのかということです。生命保険文化センターのアンケートによると、介護にかかる平均値は1人約550万円です。だから夫婦2人なら1100万円。医療費は健康保険の高額療養費制度を使えば自己負担額は抑えられますから、200万から300万くらい見ておけばいいでしょう。そこにお葬式代も入れると約1500万になるわけです」

 これは手を付けないお金として持っておく。そしてそれ以外のお金、貯金等で暮らしていくめどを立てる。「これからの時代は、働けるのなら70歳くらいまで働くのもひとつの手だと思います。貯金もできますし、年金の受給額も変わってきます。いま年金は原則65歳からの支給ですけれど、もし70歳まで働いて、年金をもらうのを70歳からにすれば、年金の受給額は最大42%もアップします。そういったことも考慮しながら、夫婦で働いて現金を増やしていくというのが、一番安心なのではないでしょうか」

 税理士であり、1級ファイナンシャル・プランニング技能士である中島典子さんは「突然破綻」の家計にならないためには、世代に関係なく、ライフイベント表を作ることがおすすめだという。

「結局、自分の現状を把握していない人が、家計を破綻させてしまうのです。人生100年時代を生き抜くためには、やはり未来を見据えたプランニングが必要です。ライフイベント表の作成はできるだけ早めに始めて、習慣化してほしいと思います」

 ライフイベント表は30年を一つの目安に一度簡易版を作ってみる。だが想定通りになるとは限らないので、定期的な見直しも必要だ。

「なのでまずは現在から5年先までのイベントと、比較的大きなお金の出入りを書き出すだけでもいいと思います。自分、配偶者、子供、同居の親がいれば、親も入れて、誰々がいつ大学に入るとしたら、ここでこのくらいかかるとか、いついつに住宅をバリアフリーにリフォームするなら、このくらいかかるとか、ざっくりと書き出し、全体を『見える化』しておくのです。そうすれば、イベント支出の備えもできますから、急にお金がなくてピンチ!というリスクも減らせます」

 そしてライフイベント表の作成と共にやっておきたいのが、「家計バランスシート」の作成だ。これは毎年お正月等、決めた時期にやればいい。

「これは今の『わが家の財産』の見える化のためにやります。まず預貯金、株式などの有価証券、保険、自宅などの金額を時価で書き出し、合計金額を出します。ローンなどの負債は返済表などから書き出し、合計金額を出しましょう。そして資産から負債を引き、純資産を出します。現在の資産、負債、純資産、すべて記入し終わったところで、それぞれ前回の数値と比較してみてください」

 前回の数値と今回の数値を見比べるだけでも、何にお金を使ったのかはだいたい炙り出せるはず。何に使ったかわからなければ「使途不明金」。この金額をいかに減らせるかが、家計改善につながる。

「『家』が健全な家計で経営されているかどうか、ぜひチェックしてみてください」

(赤根千鶴子)

週刊朝日  2018年8月3日号より抜粋