佐野史郎=マザコンの代名詞「冬彦さん」役 本人はどう思う?

直木詩帆週刊朝日
 個性派俳優として、不動の地位を保ち続ける佐野史郎さん。ドラマ「限界団地」で、連続ドラマ初主演を果たされました。不気味な老人役は、有名な「冬彦さん」役を越える怪演ぶりと話題ですが、ご自身は佐野史郎といえば「冬彦さん」ということについて、どう思っているのでしょうか。作家の林真理子さんが迫りました。

*  *  *
林:佐野さんの「冬彦さん」、いまだに言われるってどうですか。

佐野:誇りに思っていますよ。劇団時代、唐(十郎)さんによく言われました。「役者っていうのは、一生に一度出会える役があるかどうかだ」とか、「時代と寝なきゃダメだぞ」って。そのころはなんのことだか実感がなかったですが。なかなか経験できないことでしたので、役者冥利につきました。

林:私の『不機嫌な果実』がおととし再ドラマ化されたとき、ネットで「稲垣吾郎さんが冬彦さんになっちゃった」って書かれてて。それで通じちゃうんですよね(笑)。

佐野:見たことがない人でも、「冬彦さん」と言えばマザコンの代名詞みたいな……。四半世紀そう言われ続けると、さすがにどうかなと思うときもありますが(笑)。とはいえ、ありがたいことですけどね。

林:野際さんが亡くなったとき、冬彦さんとのシーンがやたら出てきましたよね。

佐野:申し訳ない(笑)。僕が死んだ翌日のワイドショーは、百パーセント確実に木馬に乗ってるシーンが放送されるんでしょうけれど、野際さんのときまであのシーンが使われるとは思わなかったです(笑)。

林:佐野さんは、共演した方とずいぶん長く続くんですね。

佐野:僕の場合はそうですね。魂の交流があった作品では、キャスト、スタッフ問わず、同じ国の住人という意識があります。林海象監督もそうですし、劇団時代の唐さんや先輩、仲間たち、井上光晴原作、黒木和雄監督「TOMORROW 明日」(88年)もそうです。長崎に原爆が落とされる1日前を描いた作品で、僕と新婚夫婦をやった南果歩さんや、共演させていただいた原田芳雄さん、桃井かおりさん、馬渕晴子さん、田中邦衛さん、長門裕之さんと過ごした時間は忘れられません。フィクションに生きていたという感じがしないんですよね。それぐらい密度の濃い時間でした。

林:そうなんですか。

佐野:果歩ちゃんとは昨年、長崎に原爆が落ちた8月9日にメールのやりとりをしました。いろいろ心配だったこともあり……30年経ってもわれわれが演じた役が生き続けている実感があるんです。もちろん「冬彦」のときの野際さんや賀来千香子さんたち共演者にも、特別な思いがあります。野際さんとは、亡くなる3カ月前に食事をご一緒させていただきましたが、戦時中の疎開の話などをなさっていて、特に陸軍に対する思いを辛辣に語ってらっしゃったのが印象に残ってます。

(構成/本誌・直木詩帆)

週刊朝日 2018年7月27日号より抜粋

続きを読む

この記事にコメントをする

TwitterでAERA dot.をフォロー

@dot_asahi_pubさんをフォロー

FacebookでAERA dot.の記事をチェック