では、わが家を守るため、豪雨に備える策はあるのか。不動産コンサルタントの長嶋修さんは、国がネット上で公開する情報を活用するといいという。

 例えば、国土地理院の「治水地形分類図」を使えば、自分が住む土地が低地なのか、湿地なのか、旧河川なのか、把握することができる。国土交通省の「重ねるハザードマップ」では簡単に洪水や土砂災害、津波のリスクを見ることが可能だ。

「ハザードマップなどのリスク情報は、親切な不動産業者であれば説明するが、法律上は説明する義務はない。大切なのは、土地の歴史や状態を自ら理解してから、判断することです」(長嶋さん)

 こうした売り手と買い手の情報格差に対して、改善に向けた取り組みがある。国交省では不動産取引に必要な情報を一元的に管理する「不動産総合データベース」(仮称)の構築に取り組んでいる。

 設計や修繕など住宅の過去の履歴情報や、ハザードマップや取引価格など周辺環境に関する情報を参照することができる。宅地建物取引業者を通じて消費者に情報を提供する仕組みだ。一部の情報は消費者が直接利用できる。国交省は今年度中に本格的に運用することを目指している。

「現在の取引価格は、リスクを踏まえた価格にはなっていない。国交省の狙いとしては、一般の人がリスク情報などをわかりやすく得られるようにし、取引価格に差が出るようにしたいようです」(同)

 既に購入している自宅が、危険な場所にあったらどうするべきか。リスクをどう捉えるかについては個人差がある。長嶋さんはこう助言する。

「土砂崩れや水害の対策をすれば、ものすごくコストがかかる。そこまでして住み続ける必要があるのか考える必要がある。自分や家族の安全が守りたければ、売るなりして、転居したほうがいい。将来はリスクも取引価格に織り込まれるようになりますので、売るなら今だと思います」

 まさか自分は被災しないだろう、という思い込みが悲劇を招く。一度、自分の住む土地のリスクを調べてみよう。(本誌・吉崎洋夫)

週刊朝日  2018年7月27日号

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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