合併症として、肺静脈の深部にバルーンを設置した場合、横隔膜神経を障害するリスクがある。回避のため、術中に横隔膜神経を刺激して、障害されていないかモニタリングしながらおこなわれる。
カテーテルアブレーションでは、入院日数は3泊4日くらいですむ。
東邦大学医療センター大森病院循環器内科主任教授の池田隆徳医師はこう話す。
「まだ現役で、これから先、薬を飲み続けることをためらわれる世代や、薬で症状が治まらない症例には、カテーテルアブレーションはよい適応になるでしょう」
■発作性で治療すれば効果も高い
心房細動は、発作的に起こり7日以内におさまる発作性、7日以上継続する持続性、つねに心筋が震えている長期持続性の3期に分けられる。カテーテルアブレーションの効果は、どの段階で受けるかに左右されると前出の山根医師は言う。
「発作性なら根治率は9割以上ですが、持続性で7~8割、長期持続性で5~6割と、確実に下がります」
さらに持続性、長期持続性では、肺静脈開口部だけでなく、さまざまな場所で異常な電気信号が起こるようになる。そのため、電極カテーテルを用いて複数の原因箇所を焼灼することになり、手術時間も長くなる。
「心房細動は進行性の疾患と考えてください。早く治療をすれば、バルーンアブレーションで根治させることも可能です」(山根医師)
焼灼法は、進行度や患者の状態を考慮し決められる。
レーザーアブレーションは全国4施設で20例に早期導入され、現在そのデータの解析中で、臨床で用いられるのは、8月からになる予定だ。クライオアブレーションは約250施設で、ホットバルーンアブレーションは70施設で受けることができる。
◯東京慈恵会医科大学病院循環器内科教授
山根禎一医師
◯東邦大学医療センター大森病院循環器内科主任教授
池田隆徳医師
(文/別所文)
※週刊朝日 7月27日号