「原因箇所である肺静脈開口部に合わせたバルーンカテーテルが2014年に保険承認され、心房細動の治療は大きく前進したといえるでしょう」(山根医師)

 もっとも新しいものとして、レーザー光で焼灼する方法が18年7月に保険適用になったばかりだ。

 電極カテーテルを用いた方法は、直径約2ミリのカテーテルの先から出る高周波電流で心筋を焼灼していく。一点一点、30~60秒かけて焼くため、熟練した医師で手術時間は2~3時間。技術的にむずかしく、医師の技量や経験値で効果が異なることがある。まれに合併症として、深く焼灼しすぎた場合、心臓の組織に孔を開けてしまうことがある。

 しかし肺静脈開口部にかぎらず、どのような場所にもおこなうことができる。

 一方、バルーンカテーテルを用いた方法は、直径28ミリのバルーンを心臓内でふくらませ、肺静脈開口部に当てて接触した部分を焼灼する。帯状に均一に焼灼できること、手術時間が短縮できる場合があること、電極カテーテルによる焼灼ほど技術的にむずかしくないことなどがメリットだ。冷凍凝固によるクライオアブレーション、高周波電流を使用するホットバルーンアブレーション、レーザーによるレーザーアブレーションの三つがある。

◯クライオアブレーション(14年承認)=バルーン内で液体窒素を気化させ冷却、バルーン表面をマイナス40度~マイナス60度にする。

◯ホットバルーンアブレーション(16年承認)=バルーンに入れた生理食塩水を高周波電流で温め、バルーン表面を60~70度にする。

◯レーザーアブレーション(18年承認)=バルーン内からレーザー光を当てて焼灼する。バルーンをふくらませることでその周囲の血液を排除し、レーザー光で心筋組織を焼灼できるようにする。バルーン内に内視鏡を入れるので、より安全に治療がおこなえる。

 バルーンを用いるデメリットとして、バルーンサイズがある程度決まっているため、肺静脈開口部の大きさによっては使えないことがある。ただ、ホットバルーンとレーザーバルーンは大きさを調整できるので、比較的、対応可能だという。また、接触する心筋表面に凹凸があると、焼灼が十分でないこともある。

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