「海水浴などで真っ赤になった方が来院されることもありますが、実はサンバーンに対しては効果が実証された治療法がありません」(※写真はイメージ)
「海水浴などで真っ赤になった方が来院されることもありますが、実はサンバーンに対しては効果が実証された治療法がありません」(※写真はイメージ)

 一年で最も紫外線量が多い時期が7月から8月だ。直射日光に当たっていればわかりやすいが、日陰でも、曇りや雨の日でも紫外線は降り注いでいる。そして肌を焼くだけでなく、人の美容や健康にさまざまな悪影響を及ぼす。不用意に紫外線を浴び続けるとどうなるか、皮膚科専門医に聞いた。

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 紫外線の皮膚への影響は、すぐにあらわれる急性傷害と、長年にわたってじわじわあらわれてくる慢性傷害に分けることができる。急性傷害のうち、日光にあたって数時間後からおこる赤くヒリヒリした炎症反応が「サンバーン」であり、水ぶくれになる場合もある。顔の日焼けでは、この炎症が引き金となって口の周りの単純ヘルペスが再発することもある。ひふのクリニック人形町・院長の上出良一医師は言う。

「海水浴などで真っ赤になった方が来院されることもありますが、実はサンバーンに対しては効果が実証された治療法がありません。日焼け止めなどでしっかり防ぎ、焼きすぎた場合は、早めに冷水タオルなどで冷やすようにしてください」

 サンバーンがおこるほど日光にあたり数日してからあらわれるのが、皮膚が茶色く(黒く)なる日焼け「サンタン」である。紫外線により皮膚の色素細胞が刺激されてメラニンがつくられるからである。サンタンは数週間から数カ月間続くことがある。

 一方、慢性的に長期にわたって紫外線にさらされた場合、とくに皮膚が赤くなることはなくても、紫外線によって皮膚の細胞が傷つく。具体的には、紫外線のなかでも波長が短いB波(UVB)により、からだの設計図であるDNAが傷つく。通常、からだに備わった修復機能が働くが、まれに直し損ねが生じ、細胞増殖に異常をきたしたり、さらにはがんが発生したりするケースが出てくる。

「その一つが脂漏(しろう)性角化症、老人性のイボともいわれます。若いころからため続けた紫外線により、高齢になってから出てくるため、“負の年金”のようなもの。これは良性ですが、皮膚の赤いシミは、表皮内にできる日光角化症という皮膚がんの前ぶれの症状の場合があります。放置していると皮膚の深部に入り込み、有棘(ゆうきょく)細胞がんに進む場合もあります」(上出医師)

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紫外線はシミやシワ、たるみなどにも