そして病院から「安全、安楽に過ごせるよう、援助いたします」と言葉をもらったとき、Aさんは心から安心したという。

「ここなら任せられる。父を最後までみることができると思いました」

 だが、そのAさんの願いはかなわなかった。

「療養病床というのは、よくならない患者さんをみるところ。看護は精神的にたいへんなのかもしれません。久保木容疑者が当時、どんな精神状態にあったかわかりませんが、個人的な感情で人の命を奪う権利は誰にもないはずです」

 こう憤りを隠さないAさんは、容疑者に対しては「とにかく真実を話してほしい」と訴える。

「報道では『家族への説明が面倒』と話しているようですが、それは理由の一つであって、直接的な動機とは到底思えません。関与した(と話している)20人が誰なのかということについても話してほしい」

 だが、立件には大きな壁が立ちはだかる。

「ほかの被害者について立件するのは、極めて困難。血液など遺体の証拠が残る2人以外は、すでに火葬されているので証拠がない。久保木容疑者の供述に基づいて状況証拠を集めて、裏付け補強するという煮え切らない捜査が続く」(前出の捜査関係者)

 抵抗できない高齢者を次々と殺めた久保木容疑者は今後、何を語るのか、注目される。(本誌・山内リカ)

※週刊朝日2018年7月27日号