オペラは単純に面白い(※写真はイメージ)
オペラは単純に面白い(※写真はイメージ)

 いままで隠していたことだが、実は大センセイ、大のオペラ好きであるから、オペラの舞台に出たりしたことがあるんである。

 これを知人に話すと、

「学校の音楽室に飾ってあったバッハとかモーツァルトの肖像画みたいなヅラを被りたかったからだろう」

 とよく言われる。

 なんたる邪推であろうか。オペラは単純に面白いんである。聴いても面白いが、実際に舞台に立ってみるともっと面白い。

 オペラなんてハイソな趣味だと思い込んでいる人が多いようだが、オペラは日本で言えば能ではなくて歌舞伎。もとは大衆演劇だから、テーマはほとんどがしょうもない男女の色恋沙汰である。

 アリアを歌い終えた歌手に向かって「ブラボー!」と声をかけるのも、見得を切っている歌舞伎役者に「成田屋!」なんて声をかけるのと同じことである。

 しかしながら、舞台に立つに当たって、自らのハゲをどう処するかについて迷ったのは、事実だ。

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山田清機

山田清機

山田清機(やまだ・せいき)/ノンフィクション作家。1963年生まれ。早稲田大学卒業。鉄鋼メーカー、出版社勤務を経て独立。著書に『東京タクシードライバー』(第13回新潮ドキュメント賞候補)、『東京湾岸畸人伝』。SNSでは「売文で糊口をしのぐ大センセイ」と呼ばれている

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